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経営学科長/経営学科 教授
畠山 久志氏
一橋大学大学院修了 博士(経営法)。
1976年に大蔵省へ入省以後、外務省、住宅金融公庫、公益企業金融公庫への出向など豊富なキャリアを経た後に、2012年より中部学院大学経営学部教授(経営学科長)。財務省では証券金融検査監督業務の企画、証券取引等監視委員会設立の事務、日本証券業協会では金融ADR機関である証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)の創設や一般社団法人 第二種金融商品取引業協会の設立に奔走。金融先物取引業協会ではレバレッジ規制の導入やロスカットルールの策定のほか監査体制の整備を担当。著書に、金融商品取引法(地域金融研究所 2014)、Q/A金融商品取引の実務対応(清文社2008)、銀行法の基礎(月刊ニューファイナンス誌連載中)など多数。
1.仮想通貨法案の国会提出
「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」として銀行法、農業協同組合法等、電子記録債権法、資金決済法がそれぞれ一部改正されますが、仮想通貨については、資金決済法の一部改正の形式を採っています。
今後、法案の国会審議の過程で内容に変更が加わる可能性はあります。しかし、政策関連法案ではなく、また金融イノベーションのインフラ整備であり、さらに制定はFATFとの国際公約でもあるので、基本的に大きな修正はなく、今会期中の成立が見込まれています。今回の法整備により、金融業界を中心に本格的な利用検討が進み、具体的なフィンテック分野の展開が図られるものと期待されます。

2.資金決済法の一部改正-なぜ、資金決済法なのか?

ところで、仮想通貨に係る規制をどのようなものとするかについて、議論が分かれていました 。*2
①金融商品取引法説 仮想通貨の取引が単なるモノやサービスの購入や支払いの手段に止まらず、私設交換所にみられるような投資性を持ち、レバレッジが効く金融取引が行われています。そこで、FX取引も含め金融リスク商品取引を包括的に規制している金融商品取引法に親和性が高く、また同法は、利用者・投資者保護の観点から規制法として十分に成熟している法律なので受け皿として望ましいとの考え方が強くありました。
②新法説 他方、仮想通貨をこの枠に入れるのかどうかについては、法律の性格の他にエンフォースメントの観点や実需が明確でないなどの議論の余地があり、それならば全く新しい法律を制定してそこで規制する方がよいという意見もありました。
③資金決済法説 その他、仮想通貨取引の性格を投資性ではなく、送金、決済手段の一種と捉えると、銀行法や金融商品取引法などの業法等ではなく、資金決済に関するインフラ整備と情報報通信技術等の進展への対応のための特別法として既に資金決済法があり、また、資金決済法は今回の仮想通貨に係る規制目的の一つであるマネロン対策に係る法律・犯罪収益法とリンクが出来上がっている(資金移動業者も「特定事業者」)ことから法整備としては移入が容易であるとの意見もありました。今回の法改正は、取引の性質やイノベーションの促進、既存の法令との整合性(受け皿性)などに重点が置かれ、資金決済法の一部改正となったものとみることができます(改正資金決済法第1条)。
3.具体的な内容
(1)仮想通貨の定義―包括基準の採用

これまで、特に金融商品取引法では、規制対象の定義についてファンドを除き、具体的列挙方式(形式主義)を取っていましたので、どのような内容にするのか関心をもたれていました。今回の法案では政府令に委任することもなく、法律レベルで包括基準(実質主義)取ることが明らかになりました。
この点は、昨年6月米国NY州が先行して定めた仮想通貨法では、仮想通貨を定義して「換金できる媒介物又は値(数量)をデジタル化し使用されるすべてのデジタル情報(unit)を意味する。」としています。包括基準ですので、今回の改正と本質的に同様です*4。
なお、仮想通貨の定義以外の規制内容は、昨年のWG報告書と基本的に同じものとなっています。
*4 June 3, 2015 Superintendent Lawsky ’s Remarks at the BITS Emerging Payments Forum Washington, DC
○仮想通貨の定義(200.2 Definitions(p) )
(p)(p)仮想通貨とは、換金できる媒介物又は値(数量)をデジタル化し使用されるすべてのデジタル情報(unit)を意味する
(2)税制(消費税)との関係―非課税化

主な非課税取引としては、土地の譲渡及び貸付けがあります。また支払手段の譲渡として、銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡があります。当然のところながら、これらの譲渡には対価として通貨が用いられます。仮想通貨が、支払い手段であり、通貨としての機能を持つものと定義するのであれば、銀行券等と同様に非課税対象とすることになると考えられます。すでにEU司法裁判所が仮想通貨・ビットコインを通貨と同様な財貨サービスの支払い手段である、と認定し、VATの非課税対象取引と判断したことからも推測されます*6。
資金決済法のプリカなど前払式支払手段も非課税取引となっていることからも資金決済法上の決済や支払い手段は非課税取引とするとの体系的整合性が図られています。なお、特定の銀行券等を収集品として譲渡する場合は非課税取引には当たりませんが、仮想通貨が収集品になるとは想像しがたいところです。
*6 Court of Justice of the European Union Luxembourg, 22 October 2015 Judgment in Case C-264/14(PRESS RELEASE No 128/15) David Hedqvist
(3)仮想通貨交換業の定義

(4)登録制の導入
仮想通貨交換業は、登録を受けた法人でなければ行ってはならないこととされています(同第63条の2)。
②登録拒否要件等 登録に際しては、株式会社であることや業務遂行に適合する資本要件・財産的基礎、執行適正性・体制整備が求められています(同第63条の5)。
(5)業務に関する規定の整備

仮想通貨交換業者は、利用者の財産を自己の財産と分別して管理し、定期的にその管理の状況について、公認会計士又は監査法人の監査を受けることが義務付けされます。
②金融ADR制度の措置 仮想通貨交換業者は、Mt.GOXの事件もあり利用者保護の観点から金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR制度)を設けることとし、紛争解決機関との間で契約を締結する措置等を講じる義務が課されました。基本的に資金移動業者と同じ扱いです。
(6)監督規定の整備
(7)自主規制機関―認定資金決済事業者協会
(8)施行期日


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情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案(平成28年3月4日提出)