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第158回「容易でない夢の実現」

2018年11月01日

株式会社マネーパートナーズ   ホームページ寄稿 2018年 11月

 最近、東京国際金融センターとか円の国際化とか昔懐かしい言葉が蘇ってきた。市長さんまで任命されたようだ。こういう動きは今迄2回あった。しかしその背景は全く別のものだった。最初は1980年代初期、日米貿易摩擦が激化し始めた頃である。米国は日本の対米貿易黒字縮小のため、市場開放、景気刺激、構造改革、円高等のあれやこれやの対策を迫ってきた。円の国際化はその一つだった。米側の発想では、円の国際的利用が自由化されて円への需要が増大すれば円高に働き貿易黒字縮小に貢献するだろうということだったらしい。日本側も乗り気で、ユーロ円の自由化とか、東京オフショア市場の創設などが実現した。しかし黒字は減らなかった。

 第2回目は1980年代末から90年代にかけて、この時は日本経済の躍進が背景だった。日本はGDPで世界第2位の大国となり、円高と黒字で対外投資は急増した。その背景の下で当然生まれた疑問と不満は、「第2位の大国なのに、対外取引では依然としてドルに全く依存しているのはおかしいではないか?」ということだった。日本の国際取引の円建化を進め、とくにアジア地域では円をドルに代わる基軸通貨とし、東京を国際金融センターにしようという気運が、当時の大蔵省、政界、学界、金融界で可成り盛り上ったのである。研究会や審議会が作られ、識者達が喧々囂々の議論を行なった。しかし、実績が全く上らない内に、バブルがはじけ日本経済は長期停滞に陥り、夢は萎んでしまった。

 今回はオリンピック後の東京の地位を守るためソフト・パワーを強化したいという狙いらしいが、勝算はあるだろうか?

 日本経済の脆弱性の一つが円ドル相場変動への耐性の無さであることを考えると、国際取引の円建化が重要であることは当然であるし、主要国際通貨たる円のホーム・マーケットとしての東京が発展すれば、それが大きな所得と雇用を生むであろうことも明らかである。

 世界における国家間の競争でも通貨と通貨市場の果たす役割は大きい。かつて米国が経済力、軍事力では十九世紀末に英国を凌駕していたにも拘らず、20世紀半ば迄、真の覇権国家になれなかったのはシティーとポンドの存在の故だった。現在中国が米国との経済抗争で守勢に立たされているのも、人民元を全く国際通貨にすることができないでいるからである。

 ある通貨が国際通貨になるかどうかは、勿論利用についての規制の撤廃とか、発行国の政治・経済力の強さ、安定性に依ることは云う迄もない。しかし、決して忘れてはならないことは、どの通貨を使うかを最終的に決めるのはマーケットであって当局ではないということである。当局が「円を国際化する」と云えば円が国際化されるわけではない。円も一時は、決済通貨や準備通貨として国際シェアが一割前後に達したこともあったが、最近は停滞してしまっている。

 国際的な混乱が起きると円が買われるということから、「有事に強い円」として円を評価する論がある。確かに、円に関しては、日本の対外純資産が大きいことや、租税負担率が低いので相対的に担税余力が大きいと思われていることなどから、円の担保力が国際的比較からしてプラスになっていることは事実である。しかし、有事になると円が買われるというのはこういう日本経済の本源的な強さ以上に、多年に亘る財政赤字の結果、膨大な円建国債が累積し、世界最大の円市場が生まれており、しかもそれがきわめて流動的だという特殊要因による所が大きいのである。円は一部投機家の些細な動きにも敏感に反応する。つまり、投機で儲け易いということである。投機家達が「閑になると円で遊ぶ」と云われているのもその間の事情を語っている。投機の対象になることと国際通貨になることは別である。

 東京国際金融センターの創設も大事業だろう。先ず、フィンテックが自由に発展できるようなデジタル空間がハードとソフトの両面で整備されねばならない。監督、経理、法務、格付等のすべての金融ソフトが利用できるようなシステムと人材が必要である。そういうマーケットとしての準備が評価されて、はじめて世界の金融機関が集まってくる。

 夢の実現は容易なことではない。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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