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第160回「歴史の休日は終った」

2019年01月07日

株式会社マネーパートナーズ   ホームページ寄稿 2019年 1月

 今年から30年前の1989年は本当に激動の年だった。ソ連邦が崩壊し、米ソの冷戦が終った。天安門事件が起り、湾岸戦争が始まった。日本では昭和が終り平成になった。バブル景気は絶頂に達し、ダウ平均は四万円に近づいていた。一方ではリクルート事件が発覚して政界は大揺れになっていた。

 当時は次から次へと起る出来事に右往左往していた記憶はあるが、今振り返って見るとあの年は第二次世界大戦後の歴史の中で世界と日本が通り過ぎていた象徴的な転換の年であったと思う。

 戦後の世界を安定して支えていた米国による一極主導の世界秩序は徐々に変質していた。70年代始めのブレトン・ウッズ制度崩壊後も米国主導は続いていたが、それは要するに代りがいないからというデ・ファクト(事実上)の体制であり、デ・ジユレ(正当な)体制ではなかった。世界における米国の本質的な国力の優位はかなり劣化していたのである。その意味で世界秩序には潜在的な矛盾が徐々に深化していた。

 1989年に起った出来事はこの矛盾を一見一掃したのである。冷戦相手のソ連が自壊して米国は勝利した。中国共産党も開放改革路線に転じた。自由で競争的な教育風土の中で情報通信技術は殆ど独占的に米国で発達した。才能と努力による利潤の極大化が美徳として社会に受け容れられた米国で金融が経済のチャンピオンになった。

 つまり、政治・経済・技術・文化のすべてで、米国が標榜し体現したデモクラシーと市場経済という価値観が世界全体に受け容れられる価値観になったと思われたのである。ワシントン・コンセンサスという言葉が流行った。ワシントンで合意されれば世界の合意になるという含意だろう。「歴史の終り」という言葉も発明された。世界が一つの価値観で統一されれば、異なった価値観の相剋の表現である歴史そのものがなくなるのだという含意だった。云うなれば、1989年前後に起った一連の出来事は確かにアメリカ時代の再来という幻想を一時的には世界に齎したのである。

 今から考えると、当時のアメリカには二つの選択肢があったように思う。一つは、この機会を利用した根本的なアリメリカ再生プランだったろう。消費過剰型の経済構造を改めて米国の指導力を維持すると同時に、集団指導の要素を加味した国際協調体制を基盤とする新世界秩序を目指す道である。そこには以前程ではないにせよ世界の伝道師としての米国の誇りと責任感が生きていた筈である。

 もう一つの選択は現実路線である。歴史の終りであろうと、ワシントン・コンセンサスであろうと、要するに各国は米国に甘えている。米国は利用されるだけでなく、自らの利益を守り、世界最強の地位を保たねばならない。

 幸か不幸か、米国の選択は基本的に後者であった。2016年のトランプ大統領登場は21世紀に入ってからの底流が最終的には地表を覆ったということだった。湾岸戦争、テロとの戦い、リーマン・ショック、そしていよいよ本格化した中国との覇権を賭けた文明の衝突と続いてくると、1989年にわれわれが夢見たデモクラシーと市場経済の最終的な勝利はやはり幻影に過ぎなかった。この30年間世界が経験していたのは歴史の休日でしかなかった。残念なことに歴史は終らなかったのである。むしろ30年の休日が終って次の一幕はいよいよ波乱万丈になるのだろう。

 日本の立ち廻りは残念の一語に盡きる。バブルが崩壊して銀行が100兆円の不良債権を抱えたときに白日の下に晒されたのは、日本の政治と経営が戦後50年間実は何も変っていなかったという悲しい事実だった。歴史の休日30年を日本は浪費してしまった。今世界が目にしているのは、成長力、生産性、人口、技術開発力、人材育成力、株式市場の成長力、二大戦略産業である情報通信と金融における競争力、財政健全性、社会保障制度の持続可能性等々、およそあらゆる活力の分野で世界の主要国中で最も劣後してしまっている老国である。しかも、一強政治体制下の安定が齎す奇妙なユーフォリアが瀰漫し、政府にも民間にも危機感がなく、むしろ危機感に対する忌避が強い。休日が終ったのに、この国はぼんやりとショックの到来を待っているようである。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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