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第278回 ~気になる貿易赤字の急拡大~

2018年02月07日

 昨日発表された、米国の貿易収支は、個人的にはドル円相場の先行きに黄信号を感じるものであった。筆者の長い為替経験から、ドル売りの原因となった双子の赤字(財政赤字+貿易赤字)が思い出されたからである。

 1980年代のことだが、貿易統計の発表を受けて為替売買をしていた。赤字幅が増えればドル売り、縮小すればドル買い、という単純なことであったが、現在の雇用統計の発表を彷彿させるイベントであった。いまさらという思いもあるが、トランプ大統領が貿易不均衡を外交交渉の道具にしていることを考えれば、何事もなく通りすぎることはできないとの思いである。

 今回特に気なったのは、赤字額が大きく増加したことである。2017年の貿易赤字額は5,660億ドル。これは2008年(7,087億ドルの赤字)以来の高水準で、2016年比でも約612億ドルの赤字拡大(12.1%の増加)となった。月別にみても、12月は531億ドルの赤字で、前月比27億ドルの赤字幅の増加である。

 見方によっては、世界経済の成長で、貿易が拡大したことで、これは良い赤字だ、という見方もあるが、為替的には、米国以外の国が輸出をふやしていることになり、ドル売りの材料となる。輸出入別にみてもこの実態がわかる。2016年比、輸出2兆3,293億ドル(前年比7.3%の増加)に対し、輸入は2兆8,953億ドル(同9.5%の増加)となっている。単純に言えば赤字幅だけドル売りの実需が増えることになる。 GDP計算でも、赤字幅が拡大することは純輸出が増え、マイナス項目が増加する。12月の赤字幅は、1.1%のマイナス要因となる計算にあり、これもドル下落圧力となる。2018年の大きな注目ポイントになると考えている。

 さて、ダボスのムニューシン発言以来、為替市場の底流には、ドルの下値探りの力が消えない。現在も109円ばさみで、方向感が出ない状態が続いている。先週後半から始まった世界的な株暴落の動きは、昨年ならば容易に108円割れとなるようなリスクオフイベントである。これを押さえているのが、米国景気や企業収益の好調さである。この見方は、米国現地からの報告から感じられるが、この勢いがいつまで続くか、市場の空気を大事にしたい。

 一方で、チャート的には、来週まで109円台半ばを保てばドル円は上昇局面に入ると計算できる。現在、21日移動平均線がドル上昇の頭を押さえている。1月9日に21日平均線を下回って以来一カ月近くこの平均線を超えられず、2月2日、5日ともドルの高値がちょうど移動平均線で止まっている。ドル上昇の勢いを取り戻すためには、この水準を越えなければならない。今日現在は21日移動平均線は110.01円、一日当たり約17銭円高となるので、109円台を維持していけば、来週には上抜ける計算とみている。

 今後1週間の相場レンジとして、ドル円は108.50円~110.50円、ユーロは、対ドルで1.2250~1.2450、対円では先週と同じく134.50~136.50円と予想している。
(2018/2/7、小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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