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第281回 ~自然渋滞からの脱出には時間が必要~

2018年02月28日

 パウエルFRB新議長の初めての議会証言は無難に終わった。ただ利上げを正当化するタカ派よりのトーンとなったので、株式相場は下落。しかし為替市場では、金利の底堅さを材料に、ドル円が107円を回復するなどドル高基調に転じた。

 事前に演説原稿が配布されていたので、利上げの継続についてある程度の理解はできていたが、質疑応答でも、経済の良好さ、インフレ目標への着実な歩みを軸に、後手に回れば利上げを早める必要になると発言するなど、イエレン体制を堅持、あるいはそれ以上のタカ派的発言に金融市場は素直に反応した。

 一方で、ドル円は105円台からの切り返しに力がない。先週のコラムでドル反騰が始まったと思えるチャートの見方を述べた。個人的には、やや異常とも思えるほどにわき目も降らずにドルを売れ!といったような勢いを感じ、さすがに行き過ぎと判断したこともドル回復の背景となったと考えた。

 しかしその勢いは107円台を付けた水曜日まで。それ以降は失速し再び106円台に逆戻り、筆者の予想は外れてしまった。それほどまでにドル売り圧力は強いのであろうか。確かに変動要因は依然と比べて単純ではなくなったことも事実である。では、このドル売りはどこからきているだろうと、筆者の持論である「渋滞理論」に踏まえて考えてみた。

 渋滞理論とは、以前このコラムで紹介したこともあるが、相場変動の分析や予想を立てるときに参考になる考え方だ。道路渋滞には、「工事渋滞」「事故渋滞」「自然渋滞」の三つがある。「工事渋滞」はわかりやすい。例えば、昨日のパウエルFRB議長の議会証言や、来週末の雇用統計のように、あらかじめ相場に変動を及ぼす、講演や経済指標発表のスケジュールがわかっているケースである。この場合は、発表を待って反応すればよい。

 「事故渋滞」とは、突然渋滞(相場大変動)を発生させる事故、事件が発生するケースである。自然的大災害、突発的紛争、世界的リーダーの政策変更を思わせる発言、または身辺的異変などがこのケースである。この場合は事故に遭遇した時と同じように、即刻その場所から逃げることが大事である。急激なリスクオフが発生するためだ。

 そして「自然渋滞」があるが、これはわかりにくい、道路で渋滞の先はどうなっているか見てみたい、と思うように、相場が理論通りにいかない時や、動きが止まった場合に、筆者はこのケースだと判断する。筆者の経験では、このような場合は、裏に政治が絡んでいることが多い。現在はこのケースとみている。では政治とは何か。一言でいえば、米国政権の胸三寸だ。背景に1月のダボスでのムニューシンのドル安容認に始まり、トランプ大統領のドル高への修正発言など、政権内で揺らいでいることに対する迷いがあると考えている。米政権の本心はドル安と思われるが、それは絶対口にはできないことだ。このような不透明な問題の解決には時間が必要だ。個人的には、四半期決算明けの4月にならなければ、明確には出てこないだろうと思っている。個人的には、そこで米ドル回帰が始まると予想している。

 今後1週間の相場レンジとしては、過去1週間より落ち着いた動きになり、ドル円は105.80円~107.80円、ユーロは、今週日曜日のドイツ、イタリアの政治的なイベントを反映して、やや弱含みを予想、対ドルで1.2000~1.2300、対円では129.50~131.50円と予想している。
(2018/2/28、小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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