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第303回 ~トランプ発言の規則性~

2018年08月22日

 2週間前の予想に比べ、思った以上に円高、ユーロ安が進んだが、筆者の基本的な考え方に変化はない。ドル円は徐々に上昇し、今年末114円の予想は維持している。ただ、トランプの「利上げ、うれしくない(I’m not happy about it)」発言がドル売りを誘引し、約2か月ぶりに110円割れの円高水準となったことは想定外であった。全体的にドル高が進んでいる中で、円も買われており、市場は相変わらず日米の一心同体ぶりを意識しているようだ。

 確かに、リスクオフの要因は多く、円が買われやすい地合いであることは事実だ。トルコをはじめとする新興国通貨の暴落や、米中貿易戦争の進展、米国のイラン制裁強化、また、ドイツのロシア接近、融資終了となるギリシャの不安定化懸念。これらが今年10周年となるリーマンショック再来への不安に結びつくのではないかと頭をよぎる。

 このような環境の中で、利鞘を狙う立場としては、この流れに乗ることは当然のこと。瞬時の判断としては、狩猟民族的なディールを心がけていかなければならない。すなわち「下がったら売り、上がったら買い」となる。円高の風潮は行き過ぎだと、いくら決めつけても、市場がその通りに動くのであれば、それを無視してまで我慢することは得策ではない、素直に乗るしかない、ことになる。

 一方で、継続的に相場を見ることができない立場の人は、まず相場の地合いを決めていかなければならない。「トレンド相場(上昇か下落か)か、レンジ相場か」である。トレンド相場と思えば、その方向に攻めていかなければならないし、レンジ相場と思えば、下がったら買い、上がったら売りの農耕民族的ディールを徹底していけばよい。

 8月は通常は閑散相場であり、アノマリー的にはレンジ相場になりやすい月。110.50円~112.50円のレンジ相場と予想していた筆者としては、110.50円割れは、絶好の買い場に見える。その気持ちに変化はない。今年から来年初めにかけての見方だが、米国景気は堅調を維持、物価も2%のターゲットを超えたまま、したがってFRBの利上げ方針に大きな変更はなく、利上げは続行。日米の金利差は拡大傾向で、ドル円は買われていく方向となる。

 加えて、トランプ発言の特異性やFRBの独立性問題から分析すると、いつものトランプ発言では為替相場の大きな方向転換になるとは思えない。まず先のトランプ発言だが、「うれしくない」の後に「しかし同時に、私はFRBがベストと思う行動を自由にやらせている(インタビューを行った通信社電)」と発言しており、FRBへの独立性を尊重する姿勢を見せている。トランプ大統領は、これまでの大統領ではほとんど見られないほど頻繁に為替相場を交渉の材料にしているので、一回の発言でなく、過去との関連性を見ていかなければならない。

 今回の発言は直接為替水準について言及したものではないが、金利は為替相場に密接に関連する要素であり、為替発言と考えて、2017年以降の発言時期とドルインデックス相場の関係を見ると、為替相場水準におけるトランプ大統領の戦術が透けて見える。そこで、今回の発言は出るべくして出たわけで、特にびっくりすることではないと分析している。

 最初は、2017年1月の大統領就任時期、「ドルは強すぎる」と発言。大統領の言葉として例のない言葉に市場はびっくりしてドルは急落した。ただその時のインデックスは100を超えていた。一方今年1月にドルインデックスが90を割った時期には「強いドルを望む」と発言。そして7月には、「ドル高は米国に不利」と発言。その時のドルインデックスは90割れから上昇した後の94前後。そして1年2か月ぶりの高値96.984をつけた先週、このうれしくない発言。やはり出たか、であった。

 このような関係から、トランプ大統領の考えるドルの適正相場は92前後。90割れはドルは安すぎ、95以上はドルは強すぎ、100以上は絶対許さないと判断できる、すなわち95以上になればイエローカードを発行し、100以上は完全なレッドカードとして市場にメッセージを発するという戦術と読んだ。

 ところで、議長の任命権は大統領にあるが、やめさせることについては、正当な理由(for cause)のある時以外、自由な解任権はない(連邦準備法10項、Federal Reserve Act, Section10)。パウエル議長としては、大統領の脅しに屈したとあっては、独立性をゆがめた議長として未来永劫に残ることになるので、そのようなことは絶対にしないと信じたい。そのパウエル議長は、24日(金)にジャクソンホールでキーノートスピーカーとして講演する(日本時間24日午後11時)。世界中が注目している。

 今後1週間の相場レンジとしては、ドル円は109.80円~111.80円、ユーロは、対ドルでは1.1400~1.1600、対円では126.50~128.50円と予想している。
(2018/8/22,小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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