2021年は、通貨地図が大きく変わると予想する。主要通貨間での強さの順序は、スイス>ユーロ>円>英ポンド>米ドルとなり、そこに中国元、豪ドルが割り込んでくるという構図になろう。アジア通貨の地位が相対的に浮上するとも予想している。その大きな要因は、アメリカに民主党政権が誕生することと、米ドルがジャブジャブ市場にあふれていることである。
その理由を述べる前に、現在相場動向とトランプ時代の値動きを押さえておきたい
1.昨年予想した2020年の予想レンジ(本コラムNo.366)と実績は下記の通りである。
途中、新型コロナショックがあったが、結果としてほぼ予想範囲内に収まっている。
年間レンジ予想 | 実績(12/30 正午現在) | |
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ドル円 | 102 ~115円 | 101.18~112.23円 |
ユーロ | 1.05~1.20 | 1.0636~1.2295 |
英ポンド | 1.15~1.35 | 1.1409~1.3624 |
2.ドル円については四半期別に、前半円高、後半円安と予想していたが、予想と異なった値動きとなり、年間通してドルは下落を続けた。
2020年 | 予想レンジ | 実績 |
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1~ 3月 | 104~112(107)円 | 101.18~112.23 (107.51)円 |
4~ 6月 | 102~110(108)円 | 105.99~109.85 (107.99)円 |
7~ 9月 | 103~113(109)円 | 104.00~108.16 (105.45)円 |
10~12月 | 105~115(110)円 | 102.87~104.25 (103.30)円* |
3.トランプ時代の相場展開と現在の動向
イ)「強いドルは好まないが、弱すぎるのも困る」と発言。
ドルインデックスは4年間で90-100の間で二回行って来い。今年はコロナショック時で102.992(2020/3/19)の高値を付けた後、下落地合いで推移し、現在は89.88と2018年4月以来の安値で、下落基調継続中。
ロ)ドル円は、トランプ大統領就任直後に118.66円の高値を付けた後、下落傾向となり、4年間の安値は101.18円(2020/3/6)で、下落基調。
ハ)スイスは、一番強いと言える通貨で、現在0.8820と2015年1月以来のスイスフラン高。終値ベースでは、2014年4月(0.8801)以来となる。
ユーロ、英ポンドは、ドルインデックスの反面鏡的な展開で、いずれも2018年4月以来の高値で、推移中。英EUの通商交渉の合意が大きい。
4.では、2021年をどう予想するか。一言でいうとバイデン政権下で基調的には米ドルは軟調、ドルはトランプ時代の安値を更新すると予想している。具体的には、
・ドル円:95~112円で、前半ドル小戻しで、後半100円割れの円高と予想。
・ユーロは1.1200~1.3200、英ポンドは1.2000~1.4000、
・ドルインデックスは85.00~9500と予想している。
5.主な要因として、政治的、経済的、チャート的、市場心理的な要因とそれぞれあるが、筆者が中心に見ているのは、米民主党政権したの為替政策であり、FRBの金融政策である。相場の基本に考えていることは、繰り返しになるが「お金は高い所(安全性、成長性、利殖性)に流れる」である。米国が、世界での政治的、経済的地位が徐々に低下し、財政赤字も巨額で増え続けているし、ゼロ金利もこの先1~2年続く見通しなど、米国に対する不安材料が多い。唯一株式市場だけが活況だが、FRBが方針転換すれば、大きな打撃を受けるに違いない。
2020年は新型コロナが地球を覆い、世界経済の大暴落というショックを巻き起こし、これまでの常識では考えられない年となった。一番大きな変化は史上最大の米ドル通貨の洪水である。将来振り返ると、2020年は通貨力地図が変わる年の始まりとして位置付けられるかもしれない。それを跳ね返すか、あるいは、その流れが続いてしまうのか、バイデン大統領、イエレン財務長官の手腕が注目される。次回は、この点を軸に、相場展望を進めていきたい。
今年1年、ご愛読いただきありがとうございました。
来年1月は、珍しく、世界中で1月4日が取引開始日。じっくりと3が日に2021年に思いを巡らせることができます。次回は、1月6日となります。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
(2020/12/30, 小池正一郎)