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第442回 ~こらえるパウエルと攻めるイエレン~

2021年07月28日

今月も残り3日、しかし大きなイベントが二つ米国に残っている。FOMCと政府債務上限(いわゆるデット・シーリング、Debt Ceiling、以下DC)の停止期間の期限終了である。FOMCは本日声明文の発表と、パウエル議長の会見に注目したい。DCに関しては、限度適用期限が2年間停止されていたが、今月末7月31日にその期限が到来することである。昨日現在8月1日以降の方針が共和党の強硬な反対で延長が決まっていない。ドル相場の将来に大きな懸念材料になっている。

これらのイベントの為替相場に与える影響は、前者が、テーパリングを控えて金利高を見越してドル高指向。後者は、米国のデフォルト懸念からのドル安スタンスへの心理的傾きである。これらの現状、見通しについては後半で触れるとして、まず現在の為替相場を確認しておきたい。

筆者が注目しているのは、リスクオフ時の「米ドルと円の関係」である。一般的な解説では、リスクオフ(リスクを回避する)時は安全通貨の買いが起こり、今がその時だという。しかし年初来の動きを調べると、ドル円の関係は年初のドル高円安に始まり全部で5回のパターンが発生しているが、ドル高円高と言えるケースは今年7月前半だけで、最近はドル高円安に逆戻りしている。すなわち円はリスクオフで買われる通貨の地位から徐々に退いていると考えている。

ただ、海外市場を中心に日本は安全で強い国という日本神話が残っているので、日々の動きだけでは方向性がわかりにくい相場展開が続いており、一気に地位返上ということにはなっていない。7月のドル高円高は、7月2日から始まった。その日は4月23日(107.64円)から始まったドル高チャネルのピーク(111.66円)を付けた日だ。米国雇用統計の発表後に株式、金利市場の変調が起こり瞬間ドル安になったことから円が買われた。ドル円が109円割れ寸前まで円高になったことから、スナップショット的には、「それ円高が来た!」と見えた。確かに、7月8日に一気に円高(110.65→109.53円)になり、それまでサポートラインであった21日線を割った。今は21日線(現在110.30円前後)は、ドル高を押さえるレジスタンス(抵抗)線に変わった。現在、日足はこの21日線と89日線(109.65円前後)に挟まれて推移している。

しかし、少し俯瞰的にみると、円の強弱に変化はないことがわかる。週足で見ると(途中で109円だけ、110円だけの週がそれぞれ1週づつあるが)、110円ばさみの期間が5月24日の週から概ね10週間も続いている。現在は、オリンピックの評価にもよるが、新型コロナの感染拡大が進んでおり、リスクオフで円高になると決めつけることはできない。

そして、今日FOMCの結果発表がある。筆者の予想は、①会合では、テーパリングの開始時期、方法について協議をしたことには触れるが、それらについての言質を与える発言はしない。②両論併記はあり得るかもしれないが、パウエル議長の認識(物価高は一過性)は維持する。ほかのメンバーからタカ派的な発言もあっても、この考え方は守っていく姿勢とみる。③むしろ米景気ピーク論などがでていることを考慮し、「FRBはまだ動かない」ことを前面に出し、市場に安心感を与える、というものだ。そうなれば、ドル円も現在のレンジ相場が続くと予想する。

一方で、イエレン財務長官には、「DC停止期間の期限が迫っている。8月以降の延長を早急に決めなければ9月~10月には、政府は資金が枯渇し、デフォルト状態になる」と議会に対し早急の決定を声高に求めている。今のところ、共和党(特にミッチ・マコーネル院内総務)は反対の立場を崩しておらず、協議の難航が予想される。筆者の過去の経験では、恒久的な方針は棚上げし、まずは短期的な停止期間の延長を繰り返していくものと考えられる。共和党は、来年の中間選挙を控えて、大きな交換条件の材料を確保していく考えだ。

ちなみに現在のDC(債務上限)は$21,987,705,611,407.70と約22兆ドルで、7月22日現在の債務残高は、概算で$28,443,457百万ろ約28兆ドルときわめて大きな開きがある。この状態が続けば、ドルへの売り圧力が高まるのは間違いない。

さて、今後1週間の相場見通しは、ドル円は、110円挟みの109.20~110.80円と予想。またユーロは、対ドルで先週と同じ1.1600~1.1800、対円では129.00~131.00円と予想。英ポンドは先週よりポンド高の1.3750~1.3950と予想する。

(2021/7/28, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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