今日は114.70円までドルは買われ、3年11か月ぶり、2017年11月以来の円安水準となった。当面の節目とみられていた114.55円(2018/10高値)を超えたので、次は114.74円だが、本命は2017年3月中旬以来の115円台狙いとなる。早ければ今月中、遅くとも次回FOMC(後述、11/2-3)後には、実現すると予想している。
ところで、先週当コラムで、相場観の二つ目として「相場はまだ若い!」という言葉を挙げた。この意味について示したい。先月9月21日までは、109円から110.50円のレンジ取引が、7月8日から約2か月半続いた。それが9月22日のFOMCを契機に、明らかに市場の潮の流れが変わった。ドル円はその日から6連騰、それまでのレンジから上抜けたのである。
【FOMC】米国の連邦公開市場委員会のことであり、米国の中央銀行である連邦準備銀行(FRB)の金融政策決定機関である。年8回開催されるFOMCの中で、9月22日の開催で、緩和政策の段階的な縮小(テーパリング)について、早期に実施の決定がなされると明らかにされた、米ドル長期金利の上昇が日米金利差の拡大をもたらし、ドル円買いの要因となった。
さて、レンジからの上放れであるが、その勢いがそれまでと違う。連日のように水準を切り上げて上昇、かごの中に押さえつけられていた鳥が解き放されたように一直線に上昇した。新しいレンジの誕生である。チャート(グラフ)を見ればわかるが、新しいレンジが誕生した時、最初の水準は一番安い(上放れのケース)と分かる。すなわちレンジが変わるとき、「新レンジの発生が明らかになったときは買え」となる。
新しいレンジは112円から上、ただし現在はその上のレベルを市場が模索中である。ただ経験則的には、「一旦形成されたら、相場が熟すまでに、古いレンジには戻らない」という傾向がある。そこでよく言われることが、「下がったら買い(Buy on dips)」である。なぜなら、売られてもすぐに新レンジに戻るからである。この戦略が通用するには、新しいレンジに取引されている期間が間もないとき、すなわち相場が若い時である。現在はレンジの上限はまだ模索中、間違いなく相場は若い。
その上限を探っているときに、第二のレンジ離れが発生した。それは10月8日の米雇用統計の日である。その日から連日のようにドル円は買われ、今日は、頭書に示したように約4年前の円安水準となった。しかもこれは対米ドルだけでない。今回の円安の特徴は、円独歩安であることである。この状態から抜け出るのは、日本側で世界的に資金を受け入れる環境ができなければならない。「木は空まで届かない」という言葉があるように、いつまでもまたどこまでも上がり続ける(円が安くなっていく)ものでもないが、大事な点は、この上昇相場が始まったばかりか、終わりの局面かを判断することである。
次回はこの点について解き明かしていきたい。まずは、通貨別にいかに円が安くなったかを表にまとめた(下記、筆者が収集している相場表より)。
NY終値、対円 | 21/9/21 | 21/9/30 | 21/10/8 | 21/10/19 |
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米ドル | 109.15 | 111.47 | 112.15 | 114.55 |
ユーロ | 127.96 | 129.01 | 129.45 | 133.23 |
英ポンド | 149.97 | 150.12 | 152.55 | 157.98 |
豪ドル | 78.90 | 80.57 | 81.90 | 85.62 |
カナダドル | 85.16 | 87.87 | 89.79 | 92.70 |
スイスフラン | 118.19 | 119.51 | 120.59 | 124.08 |
さて、今後1週間の相場見通しは、ドル円は、ドル高基調継続とみて113.20~115.20円と予想。またユーロは、対ドルで1.1480~1.1680と予想。また対円では132.00~134.00円とそれぞれユーロ高を予想。英ポンドは1.3650~1.3850とポンド高を予想する。
(2021/10/20, 小池正一郎)