FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

為替大観

最新の記事

第487回 ~アジア通貨の異変に政治介入の前例~

2022年06月29日

ドル円は今、6月7日に始まった132~137円のレンジの中にいる。それまでは4月19日から6月6日までの127~132円であったが、1回下値(127円)を試した後、破れなかったことで再上昇、3度目の挑戦で132円を突破した形となった。ドル円の変動要因は、日米の中央銀行による政策姿勢の違い、中でも金利差が大きな力になっている。パウエル議長の議会証言を終え、NY連銀のウィリアムズ総裁をはじめとするFED高官の、更なる利上げ必要との発言を背景に金利は上昇、ドル上げ基調が戻ってきた、まずは今回ドル上げ局面の高値(136.71円、6/21)を次のターゲットに、そして本命となる137.05円を捉える位置に戻ってきた。

この段階で、二つのドル天井説をサポートする材料が出てきた。一つは、米景気後退開始説(中には既に入っていると主張するエコノミストもいる)、そして、これは筆者が言い始めたことではあるが、米国のドル売り介入容認説(ただし、日本を除くアジア諸国)である。

まず、米景気後退説であるが、最近発表される経済指標が振るわない。昨日発表されたコンファレンスボードの消費者信頼感指数(6月分)に市場は大きく失望した。総合は、98.7ポイントで前月(103.2)から大きく下げ、2021年2月以来の低水準であった。株価の下落は、この指数の影響も大きい。同時に発表された将来期待指数を見れば、その深刻さがわかる。前月の73.7から大きく下げ66.4となり、なんと2013年3月以来の低水準となった。この指数は、収入、仕事、雇用等消費環境に及ぼす消費者の短期見通しを反映するものだ。これ以前に発表されたミシガン大学指標の急落と合わせて、GDPの7割をカバーする消費の後退により、リセッション入りへ警戒の声が高まって来た。

合わせて、米国内での感触も大きく変化していることは先週の当コラムでも触れたが、長く米国経済をフォローしている立場で言えば、「何か変だ」と言う気持ちだ。一番強く感じたのは、パウエル議長の議会証言である。「FRBの使命実現の為の行動<利上げ>を続けていく、その過程でリセッションも起こり得る」という趣旨は、いみじくも、「リセッションはあっても恐れていない、そこまでやらなければ、インフレは収まらない。理解してほしい」と、ある意味パウエル議長の覚悟と感じた。

パウエル議長の議会証言に合わせたかのように、6月21日には、FRBから出た「今後4四半期でのリセッション発生確率は50%以上」との調査レポートも話題になったが、先週の「株売り、債券買い(金利低下)、ドル売り」は、「とりあえずリスクヘッジだ」として市場関係者が動いたものだ。逆イールドの拡大、成長ペースが落ち始めた米国経済、国民の物価高へのいら立ち(議員と直接やり取りする議会証言のライブ中継も見て、強く感じた)など、市場はリセッションの可能性をかなり織り込み始めたと感じている。

ところで、もう一つの話題は、東南アジア諸国の苦境である。ドル高の影響で自国通貨の下落が目立つようになった。ドル円ほどではないが、年初来下落幅は、今月になって拡大している(以下2021年12月末比較)。例えば、タイは5月までは3.2%の下落であったが、6月の最安値までは7.1%下落した。同じくフィリピンは、5月までは2.8%下落だったが、6月最安値までとなると8.2%の下落である。ちなみに、日本円は、前者が12%下落、後者が19%下落だったが、ドルインデックスでは、前者が6.4%上昇、後者が12%上昇となっている。

これで米国は何も行動を起こさないだろうか? 過去の記憶を思い起こしてみた。その前に、アメリカは現在、対中戦略として、インド太平洋調整官のキャンベル氏をヘッドにインド太平洋地域で、次から次へと共同体を創設し、関係国の囲い込みに躍起である。先週は、米、日、豪、英、NZの5か国で「太平洋島嶼国との協力に関するPBP(ブルーパシフィックにおけるパートナー)」会合が行われたことも新しい情報だ。

筆者には1995年の円高時に円借款の返済問題に直面したアジア諸国リーダーと会話し、米国が一役買ったことを覚えている。時代は変われど、この時に似ていないか、と思い始め、政治が動く、ドル高の勢いが変わる時期はそう遠くない、と感じるようになってきた。これについては次回に触れてみたい。

ただ、今後1週間の予想レンジは、年後半に入ることから方向性が出にくいと考え、ドル円は134.00~137.00円、またユーロドルは1.0400~1.0700、対円は141.00円~144.00円、英ポンドドルは1.2000-1.2400と、いずれも先週と同じ地合いと予想する。

(2022/6/29 小池正一郎)

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会

このページの先頭へ

FX(外為取引)・証券のマネパHOME > マーケット情報 > FXコラム > 為替大観 > 第487回 ~アジア通貨の異変に政治介入の前例~