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市場養生訓

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第675回

2017年06月20日

 市場参加者VS中央銀行。金融市場では中央銀行が金融政策を決め、市場参加者はその環境で売買(貸借)をする。決して敵対的関係ではないが、時には予期せぬ金融引き締め―例えば利上げの幅や頻度―で市場参加者は大きな損失を被ることがある。一方で経済や市場の実態に合わない金融政策の決定は実体経済を悪化させたり、金融システムを不安定にする。

 従って市場参加者と中央銀行はうまく折り合いをつけることが望ましい。だが常にそうもいかないのが現実だ。

 先週のFOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げの決定は市場参加者の予想通りだが、今後の金利の見通しについてはズレが生じた。

 FOMCのメンバーの大勢は今年もう一度、そして来年も三度の利上げの見通しを持っている。それに対して直近のフェッドファンドの先物レートから推計する市場の利上げの見通しでは、年内利上げの可能性は50%に届かず、来年の3月になって次の利上げの見通しがようやく過半数を超える。

 最近の米国経済指標は弱いものが多いことやトランプの景気刺激策への期待の縮小から市場参加者は景気回復力の弱さを懸念している。一方議長のイェレンをはじめとするFOMCメンバーの多くは、インフレ率などの経済指標の弱さは一時的で、雇用の改善が賃金上昇に結びつき、インフレ率や消費の改善は時間の問題と見ている。

 こうした見方の相違は今回が初めてではないが、先週は利上げとともにイェレンがFEDのバランスシートの縮小計画を明らかにした。保有債券を売るのではなく満期償還の部分を再投資しないでバランスシートの縮小を図ることや金額にも言及した。量的金融緩和の出口戦略の肝の部分だが、市場への影響はあまりなかった。

 量的緩和政策を深めるために当時のバーナンキFED議長が米国のジャクソンホールでの会議で量的緩和第二弾(QE2)に言及したときはドル安の進行、新興国通貨高など世界中の市場が大きく反応したことを思うと、今回は意外な感じがする。

 これは年内にバランスシートの削減を目指すとのイェレンの言葉を信じていないことや、債券の償還部分だけの縮小となると長い時間(数年)がかかるので影響を図るのが難しいことなどがあるのだろう。

 金融政策はデータによると繰り返していたイェレンだが、突然金融の正常化に重点を置くスタンスになったようだ。自分の任期内に道筋をつけようとする焦りでもあるのか。

 いずれにせよ市場参加者とFEDがどの時点で折り合うのか、あるいは相違がさらに拡大するのか、それにより相場の方向性は大きく変化するだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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