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市場養生訓

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第678回

2017年07月11日

 まるでG7で協調利上げを決めたような反応だった。債券市場が特に反応し、ここ2週間ほどで10年債の価格は急落(イールドは急騰)した。米国、英国、カナダ、ユーロ圏の中央銀行総裁が相次ぎ景気にポジティブな見方を示し、従来の超金融緩和政策からの転換を示したと捉えられた。

 もっとも実際には中央銀行総裁たちの多くは市場の受け止め方よりも慎重な言い回しをした。

 それにそれぞれの中央銀行の内部も異論を抱えていて、一枚岩ではない。利上げの時期、資産の縮小開始の時期それにペースについてだ。

 為替市場もドル円はドル高に動いているが、他の通貨に対しては大きな変動はあまり見られない。ユーロ、ポンド、カナダドルなどについては米国同様金融政策の転換の期待もあり、相殺されていると捉えられている。

 しかしドルの市場での支配的な地位(市場取引の9割が対ドル為替)もあり、同様な要因が2つの通貨にある場合、ドルの影響力が勝るという市場の力学から見ると、ドルはそれらの通貨に対しても上がっていいはずだ。

 それに新興国通貨に対しても大きく値を上げなかったということも従来のパターからすれば解せない。

 なぜか。2つ考えられる。一つは超金融緩和政策からの出口戦略に対する懐疑だ。フェドファンドの先物レートから推計されるドルの利上げ見込みは12月に60%の可能性で1度あるだけで、来年6月もその水準が維持されるとの見方が多い。 

 FEDは9月から資産の縮小を進めるとの見方もあるが、(この点についてはFEDのイェレンが明日の議会証言で明確にするかもしれない)少なくとも金融市場では金融正常化に向かって利上げサイクルが進むとの見方は少ない。

 もう一つはドル金利の変動とドル需要の関係だ。一般的にドル金利が上昇すればドル需要が高まり、ドルの為替レートは上昇する。

 世界の外貨準備の通貨別割合の推移は中長期の通貨に対する需要の指標の一つだが、このところドル金利に対する感応度が落ちている。ドル金利が上昇してもドルの割合が増加しないのだ。

 これは金利以外の要因でドルを回避する動きがあり、結果としてドル金利とドル需要の関係が希薄になったように見えるのかもしれない。金利以外の要因とは政治的要因や通貨分散を促進する運用方針の変化などだ。

 いずれにせよ出口戦略は超金融緩和政策を始めたときに描いたイメージよりもはるかに不明瞭で複雑なものになりそうだ。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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