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市場養生訓

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第691回

2017年10月10日

 トルコリラが一時6%以上下落した。米国がトルコに対してビザの発給を停止したためだが、エルドガン大統領がクーデターを鎮圧してから米国との外交関係はくすぶっていた。

 もっともトルコリラは対ドルで1か月ほど前から下落基調にあった。ドルリラは3.40台から直近では3.72台で推移している。

 こうした傾向は他の新興国通貨にも見られる最近のドル高基調の反映でもあるが、ドル高の要因となっているのは、FEDの利上げ基調、トランプ政権の減税策、FEDの人事などだ。

 だがどの要因も決定的ではない。

 利上げについては、フェドファンドの先物レートから推計する可能性は今年の12月に9割近くある。だが来年の利上げになると、FEDの3回の利上げ見通しに対し、市場は慎重だ。年前半は利上げがなく、6月になって利上げの見通しがかろうじて50%を超える。

 トランプ政権の減税案はこの1か月のドル高基調に最も寄与した要因だろう。特に企業の海外の利益の米国内への還流(リパトリエーション)が大きくなる可能性があるからだ。

 確かにこれまでも何度かリパトリを促す政策があり、市場はドル高に動いた。今回は海外利益の額も大きく、リパトリが促されれば大きなドル買い要因になり得る。

 だが海外に利益を滞留させている企業の多くは、国内にも利益を相当額滞留させている。そうした状況で税率が有利になるからと言ってリパトリをして米国内で設備投資などのために資金を使うかどうか。リパトリが促されたとしても限定的になる可能性がある。

 FEDの人事では議長のポストが誰になるかに注目が集まっている。候補を引き締め派か緩和派と色分けて見ているが、トランプの志向は低金利と規制緩和だ。特に規制緩和はトランプを支持したウォール街が最も望む政策だ。

 その点では副議長として金融規制の責任者になるランダル・クオールズが先週上院で承認された点は重要だ。トランプの指名から3か月もかかった。彼は銀行のストレステストや、自己勘定でのリスクテイクの禁止を謳ったボルカールールの変更を主張している。

 だがこれもすぐに実行できるかは疑問だ。イェレン議長やその他のFEDの理事たちは現行のストレステストやボルカールールを支持してきた。少なくともイェレンの来年2月までの任期までは規制緩和は進まないと見るのが妥当だ。

 つまり現在のドル高要因はどれも確たるものではない。合わせ技の効果のようなものだろうか。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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