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第703回

2018年01月16日

 先週中国が米国債の購入量を減らすか中止するとの話が出て、米国債が大きく売られ、ドルも下落した。中国の高官の意見としてブルームバーグが報じたものだが、後日中国の通貨当局はその話を否定した。フェイクニュースということだ。

 実際はどうだろう。多分高官の発言は事実だろう。この発言には様々な意味がある。大きく2つの背景がある。

 中国には中長期的な戦略としてドル本位体制からの脱却がある。人民元が取って代わると言うよりも多極的な通貨体制を国際金融の軸にする戦略だ。SDRもその一つだ。政治力を駆使して人民元をSDRの構成通貨に入れたのも、SDRの地位を高めるためだ。ロシアやイランなどと原油の国際取引をドル建てから人民元建てなどへ移行する可能性を話し合っていることもその一環だ。決済通貨としてのドルの比重の低下が狙いだ。

 この観点からすれば準備通貨としてのドルの比重も低下させたいのが戦略に適う。中国の外貨準備は3兆ドルを超えるが、米国債の投資額は公式には1.2兆ドルだ。だが他の金融センター名義の投資額も相当ある。合計では2兆ドル近くの保有と推計される。つまり中国自身が最大のドルのサポーターになっている。

 これは米国債市場が世界で最も流動性があり、信用力も高く外貨準備の運用先として適しているからだ。現状では外貨準備額が増えるほど米国債への依存度は高くなる。それに米国債価格の下落やドルの下落は中国の外貨準備の価値を減らすことになる。

 ドル本位制からの脱却を目指す中国はこの矛盾に付きまとわれる。米国債への依存度を減らしたいがなかなかそれが出来ない。

 もう一つの背景は、短期的なものだ。米国の貿易政策にたいするけん制だ。中国の対米黒字の増加に対するトランプ政権の報復措置に対してだ。中国の貿易収支の黒字は米国債の購入という形で米国に還流していることを認識させるためだ。特に長期金利の上昇傾向の中で長期債の購入の重要度は増しているからだ

 いずれにせよ中国は市場の混乱や大きな損失を被らないよう徐々に長期戦略の実現に向けて歩み続けることは確かだ。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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