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市場養生訓

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第729回

2018年07月24日

 人民元の下落傾向が止まらない。対ドルで年初来再安値の水準にある。直近では6.84(CNH)を超えた。

 ドル金利の上昇、米中貿易戦争などが背景だが、最近の一連の金融緩和策も要因だ。昨日は中国人民銀行が約5千億人民元の資金供給を金融機関に行った。先月は預金準備率の引き下げを行っている。

 人民元の下落を二つの側面から考える。一つは、人民元の下落は中長期のトレンドとして続くのか。もう一つは、人民元の下落が他の新興国通貨の下落に拍車をかけるのか。

 第一の面は二つの視点から見る必要がある。一つは、2015/16年の外貨準備が1兆ドル吹き飛んだほどの事態になるかどうか。もう一つは、通貨戦争の契機になるかどうか。

 15/16年の時は、株価下落、資本流出、人民元安の悪循環が発生し、大幅かつ継続的なドル売り人民元買いの市場介入を余儀なくされた。人民元の国際化、資本取引の自由化促進の過程で起きたが、結局資本取引規制の強化などの規制措置を講ずることになった。今回はノンバンクなどによる信用膨張の削減など金融引き締め措置による影響が中小企業の資金繰りなどにも及んだことが背景にあるが、大幅な資本流出が発生する兆しはあまりない。また資本流出が発生して人民元安が進んでも、前回のように頻繁な介入で食い止めようとはしないのではないか。外貨準備の大幅な減少はそれ自体が通貨安の要因になる。市場の需給にレートを任せる度合いは以前の人民銀行よりも高まっている。

 もう一つの通貨戦争の契機になるかはトランプ大統領次第だ。貿易戦争が通貨戦争あるいは為替レートの国際的な再調整に繋がるのは珍しくはない。米国の貿易赤字の削減が短期的に進むとは考えにくいので、為替レートは標的になりやすい。

 第二の面の、他の新興国通貨の下落に拍車がかかるかどうかだが、これは可能性が高い。ドル金利の上昇や政治的な混乱で、幾つかの新興国通貨は急落し危機的な状況に陥った。それでも新興国通貨全般の危機に波及しなかったのは、一つに人民元の安定がある。人民元の下落が続くとその他の国は中国に対し貿易面での競争条件が悪化する。特にアジア通貨には影響する。アジア通貨危機や新興国通貨危機に繋がる可能性も出てくる。

 こうしたシナリオを防ぐとしたら、それもトランプだ。人民元やその他の通貨がドルに対して下落する中で、米国の貿易赤字が減る見込みは薄い。減るとしても時間がかかる。トランプは結局ドル安政策に転じる。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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