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市場養生訓

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第733回

2018年08月21日

 トルコリラ絡みで大きな損失を抱えた人の話が絶えない。リラは対ドルで1年で半値になった。リラ建ての外債、リラが絡む仕組債、リラ建て資産を対象の投資信託等、こうした金融商品の購入の動機は金利の高さだ。

 金利の高い通貨には金利の低い通貨から資金移動が起こり、高金利通貨の為替レートは低金利通貨に対して上昇する。為替市場の常識の一つだ。しかしこの常識には条件がある。異常に高い金利の場合はその限りではない。当てはまらないことが多い。金利の高さが急激な資本流出や手に負えないインフレ率を抑えるためだったりするケースだ。

 通貨を95%切り下げたばかりのベネズエラのボリバールは言うに及ばず、IMFに支援を仰いだアルゼンチンのペソもそうだ。トルコのリラもそのグループだ。

 世界の金利水準が数%の時に10%以上の金利が付くとしたら訳ありと思わなくてはいけない。一般的に日本の投資家は円ベースだから円金利が基準になる。円金利以上の金利が付くとしたら、そこには必ずリスクがある。それが為替リスクなのか信用リスクなのか、あるいは流動性リスクなのか。そうしたリスクに通常よりも高い金利は見合っているのか。その判断が必要になる。

 証券会社や銀行の担当者にそれを期待するのは無理だ。本当のリスクを理解していないセールス担当者は珍しくなく、理解していたとしても商品を売るインセンティブが強くリスクを曖昧にする傾向があるからだ。

 今回はトルコリラだが、過去にはブラジルレアルや豪ドルなどでも日本の個人投資家の大きな損失が市場で話題になった。喉元過ぎれば熱さ忘れる、で同じことを繰り返してきた。実際には熱さが残っているうちに再び高金利商品に手を出すのが現実だ。

 ところでトルコはカタールと通貨スワップ協定を結んだ。トルコがリラを市場で支えるための介入資金の調達のためだ。中央銀行が互いの通貨を必要な時に交換する取り決めだ。とりあえず30億ドル。

 通貨スワップ協定は97年のアジア通貨危機後に日本などを中心に多く締結された。二国間も多国間のケースもある。交換する通貨は互いの国の通貨の場合も一方がドルの場合もある。結局は市場でドルを売って当該通貨を買い支えるからだ。

 この協定は通貨危機の予防手段の一つだ。この協定があることで当該通貨国の介入資金が潤沢にあることがわかるので市場介入の効果が増すことになる。そのためにはスワップする相手国の外貨準備が豊富なことが条件になる。日本、中国、主要な原油輸出国などだ。

 ただ実際に通貨危機が深化して30億ドルで足りなくなったとき、カタールがどこまでコミットできるかはわからない。場合によってはカタール自身にも危機が波及し、長い間維持してきたドルペッグ制にプレッシャーがかかる可能性があるからだ。

 トルコが危機を脱するには、大統領が利上げを嫌っていても、思い切った利上げをして中央銀行の信頼を取り戻すことだ。それがリラの回復への一歩になる。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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