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市場養生訓

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第745回

2018年11月13日

 今年中国の経常収支が赤字になれば93年以来ということらしい。WTOに加盟して人民元を切り上げ、国際舞台に登場してからは初めてになる。第三四半期の9月までは130億ドルの赤字なので、このペースが続くことが前提だが。

 中国は日本の金融市場の発展のプロセスを研究しているが、変動相場移行後黒字を記録していた日本の経常収支が赤字になったのが80年だ。経常収支の黒字を基にした円高見通しが見事に裏切られた年だ。原油価格の上昇、資本取引の一部自由化、ドル金利の上昇などが背景にあった。その点では現在の中国の環境と類似点は多い。

 人民元は対ドルで今年春ごろに人民元安傾向に転換した。10月には人民元安傾向を抑制するために当局は300億ドル余りのドル売り人民元買い介入を行ったと推測される。外貨準備の減少などから判断したものだ。トランプ政権は、中国が関税の影響を相殺するために人民元安方向に相場管理する懸念を抱いているが、実際は逆のオペレーションを行った。

 というのも中国にとって15-16年に発生した巨額の資本流出、1兆ドルの外貨準備の減少、資産価格の大幅な下落などを引き起こしたチャイナショックを避けたいからだ。先行き大幅な人民元安懸念が生まれれば、そうした事態が生まれる可能性は高まる。

 まして中国には債務問題がある。企業の債務残高が膨張する中で、不動産関連の借り入れの満期が来年集中し、そのリファイナンスの問題が控えている。その時に人民元や金融市場が不安定だと、デフォルトの増加リスクが拡大する可能性も出てくる。

 そこで人民元の安定は必要になる。少なくとも急激な人民元安の進行は避けたい。人民元を取り巻く環境である原油価格とドル金利は中国当局が管理できないが、資本取引の自由化の進展具合は管理できる。

 チャイナショックのときそれまで進めてきた資本取引規制の緩和路線は大きく後退したが、その後規制緩和路線に戻った。米国の要求にも沿うものだが、大幅な人民元安抑制のためなら再度路線を修正することに躊躇しないだろう。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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