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市場養生訓

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第754回

2019年01月22日

 通貨には互いに深い繋がりを持つものがある。一つは制度的で、もう一つは市場的なものだ。

 例えばデンマーククローネはユーロと一定の範囲で連動する。香港ドルは米ドルとの変動幅が決まっている。こうした通貨はそれぞれの国の政策上、ユーロやドルに自国通貨の価値を繋げている。

 一方でオーストラリアドルと人民元は制度としての繋がりはないが、連動する局面が多い。それはオーストラリアが中国との経済関係を深めてきたからだ。オーストアリアにとって中国は最大の貿易相手国だ。鉄鉱石はオーストラリアの最大の輸出品だが、中国の需要が頼りだ。中国景気の如何でオーストラリアの輸出量は変化し、資源輸出国のオーストラリアの景気全体にも影響する。

 そこで為替市場では中国の景気指標を目安にオーストラリアドルの売買をするようになり、通貨の連動性が高まった。

 最近人民元がそれまでの下落基調から上昇局面になったが、オーストライアドルも同様に下落基調から戻し局面になった。

 だが、中国の貿易は輸出入とも減少傾向であり、債務問題が深刻化する中で景気の減速傾向は明らかだ。金融政策も緩和基調を維持せざるを得ない。そうなると人民元の上昇傾向は限定的になり、オーストラリアドルの戻りも限定的になる可能性が高い。

 このようにオーストラリアドルの動向は中国の経済や通貨に大きな影響を受けるが、すべてそれで決まるわけではない。国内の金融政策にも大きく影響される。

 その金融政策だが、RBA(オーストラリア中銀)は次の政策は利上げだと言ってきた。だが様相が変わりつつある。というのも不動産市場の異変だ。特に住宅市場だ。住宅ローンを増やしてきた個人の債務残高はGDPの120%にも及ぶが、市況の悪化で信用収縮が発生する可能性もある。個人消費が落ち込み、そうなれば景気の落ち込みは避けられない。

 そうした展望が有力になればRBAは利上げではなく、利下げのシナリオを描かなければならない。

 となれば中国要因からも金利要因からもオーストライアドルの戻りは限定的な上、一層の下落の可能性が出てくる。

 この下落基調にブレーキがかかるとすれば、それは米ドルの下落の力以外にはないだろう。
 

※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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