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市場養生訓

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第781回

2019年08月13日

 中央銀行は危機対応で同時利下げを行うことがある。例えば9.11同時多発テロの時などだ。先進国の中央銀行が金融緩和策を実行した。このように同時利下げは専ら先進国の中央銀行の協調で実行されることが多かった。

だが先週の同時利下げは新興国の中央銀行中心だった。インド、タイ、フィリピン、ニュージーランドなどの中央銀行だ。その引き金は先週初のドル人民元為替レートの7.0突破にある。その背景には米中貿易戦争の長期化に伴う世界景気の減速と不確実性の拡大がある。

特にインドは政策金利を0.35%下げた。本来ならば0.25%のところだ。ただでさえ第一四半期のGDPが5.8%と予想外の低水準だったところだ。これでは7%や8%の目標は難しい。それで今年4回目の利下げに踏み切った。

フィリピンは0.25%下げた。今年2度目だ。第二四半期のGDPは5.5%と4年ぶりの低水準だった。特に製造業が弱い。このままでは政府目標のGDP6-7%の達成は難しい。

タイの利下げは予想外だった。0.25%の下げで政策金利は1.5%になった。4年ぶりの利下げだ。

ニュージーランドは0.5%の利下げで政策金利は1%と最低水準になった。中央銀行は一層の金融緩和の可能性を示唆した。

ちなみにほとんどの通貨の為替レートは利下げ時に売られ、その後若干戻したが、直近では利下げ時の水準に近い。

そもそも人民元の下落はアジア諸国の交易条件を悪化させ、通貨安圧力を引き起こす。その上での利下げなので通貨安傾向に拍車がかからざるを得ない。こうした傾向が続けばアジア諸国からの資本流出が加速する。それが更なる通貨安を引き起こす悪循環に陥る可能性もある。例えばインドの場合7月はネットで55億ドルの資本流出が記録されている。つまり景気が悪いからと言って闇雲に利下げを続けることはできない。

こうした状況を防ぐには、一層の金融緩和を控えるか、人民元安が続かないことが条件になる。あるいはドル安の進行だ。この中でアジア諸国の裁量で可能なのは一層の金融緩和を控えることだけだ。ただこの場合、中銀への政治的圧力は相当なものになる。後の二つは祈るしかない。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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