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市場養生訓

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第803回

2020年02月04日

 今回のコロナウイルスの件でグローバリズムの擁護者の地位は完全に中国に移ったようだ。
米中貿易戦争の時に自国第一を唱えて保護主義政策に走った米国に対し、欧州と並んでグローバリズム重視を掲げた中国は、コロナウイルスの感染を防ぐために各国が人やモノの移動制限をすることに対して、グローバリズム重視の立場から異を唱えた。
友好国の北朝鮮やロシアなどでも国境閉鎖や管理を強化するほど感染症の拡大は世界の脅威であるには違いないが、今日までの人民元の動きを見る限り比較的落ち着いたものと言える。
直近のドル人民元は国内(CNY)6.9990、オフショア(CNH)6.9980と、7.0をわずかに下回っている。
春節の休みの間も取引されていたCNHは先週木曜日に7.0を超えていた。春節明けの昨日はCNYでも7.0を超えて取引された。幾分パニック的な動きもあったが、大きく人民元安に進むことはなかった。
中国人民銀行の市場対策としては、1700億ドル超の流動性供給、レポレートの引き下げ(10bp)を実施し、資金の量とコストの両面で手を打った。
中国当局にとっての懸念は大量の資本流出だ。2015年のチャイナショックは資産価格の暴落、1兆ドル近く外貨準備を喪失した。資本流出と人民元下落の悪循環が続いたためだ。
ドル人民元の7.0超えはそうした資本流出が始まる可能性があるポイントとして市場が捉えるようになった。最近での7.0超えは昨年8月に起きた。トランプ大統領が中国製品に対する関税を引き上げたのが契機だ。7.0超えは12月下旬まで続いたが、大幅な資本流出は発生しなかった。チャイナショック後、中国は資本取引の自由化の流れを止め、規制強化に転じていたことも一因だ。
米中の貿易戦争が第一段階の合意で休止状態になったことで、ドル人民元は7.0を下回る状況が続いていた。だが今回のコロナウイルスの感染問題で再び7.0を超えてきたのだが、今後はどうなるのか。
もちろんコロナウイルスの感染拡大の程度や終息時期によるところが大きいが、ポイントは米中の合意にあった競争的な通貨操作はしないとの条項だ。米国は昨年8月以降の7.0超えのレートが続いたことを、米国が中国に課した関税の引き上げを相殺するための通貨操作とみなした。
だが今回は、中国の経済成長低下傾向の中で発生した感染症拡大による生産や投資の減少が人民元安の背景にある。米国も7.0超えを為替操作だと非難し難い。大幅な人民元安に繋がらない限り、人民元安を放置することは中国にとって都合がいい。当分7.0超えが続く可能性が高い。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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