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市場養生訓

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第829回

2020年09月01日

 安倍首相が退陣表明をした。長期政権であり、アベノミクスは世界ブランドだったので世界に衝撃を与えた。アベノミクスは三つの経済政策からなる。大胆な金融政策、機動的な財政政策、投資喚起の成長戦略だ。ただ世界的な知名度に見合う成功はしなかった。成長戦略は不十分で、デフレからの脱却も十分進まなかった。最近では低インフレ、低成長が長期化するジャパナイゼーション(日本化)の方が日本の代名詞として使われることが多くなった。
 とは言え市場にとっては大きな出来事であることに変わりはない。政治の変化は為替にも影響するのが一般的だ。今回通貨円への影響を見るのに3つの視点がある。
 一つは、政権交代のような政治イベントでは通貨安になるのが一般的だ。特に保守政権から革新政権への移行の時には顕著になる。市場は政治のドラスティックな転換を嫌うからだ。ただし明らかに良好な政策への転換が期待される場合はこの限りではない。
 今回は長期政権からの転換だが、同じ自民党内の政権交代である。しかも安倍路線の継承を掲げる菅官房長官が有力な後継と見られることから、政策の大転換の可能性はない。その点では一般的な因果関係である通貨安にはなり難い。
 もう一つは、安全通貨/避難通貨としての円の役割だ。安倍辞任の報が伝わったとき、リスク回避として安全通貨、円が買われた。だがもっと重要なのは今回のイベントが円の安全通貨としての地位を中長期的に危うくするかどうかだ。円が安全通貨として市場でサポートされているのは、政治の安定性、法の十分な整備、充実した資本市場、資本及び為替市場の十分な流動性、などの要因があるからだ。
 問題は安倍政権の交代でこうした条件が損なわれるかどうかだ。この中では特に政治の安定性がポイントになるが、前述したとおり自民党政権の継続が前提である以上、懸念はほとんどない。その点では安全通貨としての円の役割は今後も続く。
 三つめは、アベノミクスの終焉だ。政策が継続されようがアベノミクスはとりあえず終わる。アベノミクスは当初の円安、株高の作用が強かっただけに、アベノミクスの終焉により円高、株安との判断に傾く可能性もある。市場にはパターン化して物事をとらえる傾向があるからだ。
 以上三つの点を考えると、今回の安倍退陣が円安に作用する可能性は少ない。その上、先週のFEDの新たな金融政策の方針がある。インフレ率が2%以上になってもすぐには利上げをしないとのメッセージだ。ゼロ金利政策の長期化だ。現在ドルは主要通貨に対してドル安傾向にあるが、このトレンドがしばらく続く可能性がある。安倍退陣の円安作用が弱い以上、円もドルのトレンドから逸脱できないだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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