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市場養生訓

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第837回

2020年11月17日

 米大統領選に続いてコロナウイルスのワクチン期待に沸く株式市場には活気がみなぎる一方で、為替市場の変動は全体として緩やかだ。だがよく見ると株式市場同様、否それにまさる変動を見せる通貨もある。
 その一つがトルコリラだ。リラの変動は激しい。今月の初めにはドルリラは8.5を超えた。リラの史上最安値だ。年初は6.0前後だったからそのレートを基準にすれば40%以上のリラ下落になる。そのリラがここ約1週間で今度は10%ほどの上昇を見せ、7.70を割った。直近では7.7080近辺で推移している。
変動のスピードと幅は別格で短期のトレーディング好きには絶好の市場だが、だからと言ってすべての局面で勝つのは難しい。中長期でリラショートにしておけば労せずに大きく勝てたわけだが、実際は7.0や8.0などの節目のポイントではピーク感もあってポジションを持ち続けるのも簡単ではない。
 それでもリラの変動に惹かれるのはその変動要因にある。ドラマ的なのだ。主役の絶対的権力者がいて、その娘婿の政権ナンバーツーの財務大臣がいる。そしてその政敵の元財務大臣がいて、新しく中央銀行総裁に就く。任命者は絶対権力者の大統領だ。それを知った娘婿が怒って財務大臣を辞職する。
 一連の人事は最近の出来事だが、大統領がこれまで大臣や総裁を首にしてきたのは、彼の信条であるインフレを抑制するには利下げが必要との方針に納得できなかったり反したためだ。とにかく利上げを嫌う。通貨安はインフレの要因だが、利上げで通貨安を抑制することに同意しない。娘婿は義父の意を汲み、通貨安は輸出を促進するのでいいことだと表明してきた。実際は中銀も財務省も通貨安抑制策を採ってきたのだが功を奏さなかった。リラ買い市場介入やリラ売り規制、様々な取引規制、外国金融機関への政治的圧力などだ。利上げも徐々には行ってきた。だが市場が求める幅や頻度には程遠かった。
 だがここにきて大統領も苦い薬を飲むことを表明した。インフレの高進、資本流出が続く一方で乏しい資本流入、外貨負債の増加、底を尽きかけてきた外貨準備など、悪化が進むトルコ経済の現状の転換の必要性に気付いた。そのためには自分の信条を曲げることも厭わない表明と市場は理解した。最近の一連の人事もその一環で市場は新任の中銀総裁が思い切った利上げに踏み切ると見込んだ。リラの最近の上昇はその期待を反映したものだ。
 その期待が確認されるのが今週木曜日だ。新任の中銀総裁が臨む金融政策会議が開かれる。トルコの政策金利は現在10.25%だが、市場は4-5%の利上げを見ている。相当な利上げだ。その程度でないとリラ安が収束しないと考えるからだ。
 だがコロナウイルスで経済が縮小する中での大幅な利上げは景気回復を一層遅らせる。いずれも棘の道だ。利上げでリラ安は止まっても、それがまたリラ安の種をまく。ドラマは続く。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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