FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

市場養生訓

最新の記事

第840回

2020年12月08日

 東欧の通貨は普段はあまり関心を持たれない日影の存在だ。だがたまに注目されることがある。ユーロが生まれて20年になるが、スタート時、11の西欧通貨が一つになるので市場での取引量が大きく減少することが懸念された。特に西欧通貨は市場での取引量が多かったのでなおさらだった。

 しかし蓋を開けてみると杞憂だった。その理由の一つは東欧通貨の取引量が格段に増えたからだ。東欧への投資も増え経済活動も活発になったことが背景にある。中でもポーランドズロチとハンガリーフリントは代表的な東欧通貨だ。
 ポーランドとハンガリーは2006年にはEUに加盟した。つまりユーロへ向かう予備軍になったわけだが、ユーロ圏の債務問題や国内の政治問題などでユーロへの道は遠ざかって今日まで来た。
 そして現在再び両国が注目を浴びている。最悪のケースではEUからの離脱の可能性も否定できないからだ。
両国は最近権威主義の政治を強めていてEUの価値観と相いれないケースが多くなっている。特に司法の独立の問題だ。権威主義の政府は司法も管理下に置こうとする。それでEUと揉めている。EUは7月にコロナからの復興基金など含めた巨額の復興パッケージを決めたが、資金配分を巡って欧州委員会側は独立した司法を保証する法による支配を条件にした。両国は国家の支配権を主張して対立している。BREXITの英国と似たような構図だ。
 ただ違いもあり両国はそう簡単にEU離脱というわけにはいかない。というのも比較的豊かな英国はEUの中では資金供給の側であり、ポーランドとハンガリーは資金を受ける側の国だからだ。離脱は即資金難に陥る。
 EUも英国に続いて離脱する国が増えることは大きな政治的ダメージになる。EU存立の問題にも発展する可能性もある。
 つまりEU離脱は両者にとってマイナスなのだが、これまでのところなかなか妥協点が見つからない。
 ポーランドズロチとハンガリーフリントのレートを見ると、両通貨とも対ドルではおおよそ年初来高値(ドル安)の水準にある。対ユーロでは年初に比べると安値水準にあるが、このところ最安値水準からは若干戻している。
 前者はドル安の影響が強く、後者はユーロ高の影響が強いことが主因だ。ユーロに対して若干戻しているのは、EUと両国との交渉が長引き難しくなるとEU離脱問題がその先に見えてきてしまう懸念があるからだ。そうなれば両通貨はもちろんユーロも大きな痛手を被るのは必至だ。
 さらに展望すれば円高の可能性が濃くなる。90年代にバルカン諸国が紛争の嵐に巻き込まれた時、資金が最も多く向かった先が日本円だった。東欧のリスクに最も関係が薄く、地理的にも遠い円が安全通貨・避難通貨として受け皿になった。同様な展開になっても不思議ではない。

このページの先頭へ

2021年07月27日
2021年07月20日
2021年07月13日
2021年07月06日
2021年06月29日

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会