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外貨投資 転ばぬ先の智慧

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第591回 7月半ばからのドル下落はそろそろ一服となるか?

2017年08月07日

 先週末4日に発表された7月の米雇用統計の結果によって、7月半ばから続いていたドル安の流れにようやく一旦歯止めがかかることとなった。ドル/円の値動きを週足ロウソクで見ると、先々週までは3週連続して陰線であったが、先週はようやく陽線に転じた。この陽線の形状(下十字に近い)は、6月半ばに108円台の安値をつけた後に急反発となった週の前週のもの(下十字に近い陰線だった)と似ている。その意味では、今週以降にあらためて反発・上昇の流れが始まる可能性もないではないと見られる。

 7月の米雇用統計の結果は、全体に非の打ちどころのないものであった。労働参加率がアップしているのにも拘らず失業率が低下した点や、失業率が“ほぼ完全雇用”のレベルにまで低下しているのにも拘らず雇用者数が伸びたこと、さらに前回(6月)分の雇用者数が上方修正されたことなど、個々の項目を見ても好評価に値する点ばかり…。
 もちろん、米国の雇用情勢が明らかな改善傾向を辿り続けていることは誰もが百も承知であり、市場にとってはとうに織り込み済みで、今後は「むしろインフレ率の方に目を向けて行くことが重要である」とイエレンFRB議長も機会あるごとに述べているし、市場も同じ構えでいるようである。
 なかには、米雇用統計の一項目である「平均時給」の伸びが不十分(7月は前年同月比+2.5%)と見る向きもある。しかし、よく考えてみれば「新しく雇われる人の賃金は基本的に安い」のであるから、新規雇用者数の伸びが大きくなるほど時給の「平均」は伸びにくくなるとの見方もできるだろう。その意味では、アトランタ連銀が独自にまとめて公表している「賃金上昇トラッカー(Wage Growth Tracker)」のデータの方をむしろ重視すべきであろう。このデータは「就職して1年以上の人が対象」であるうえ、シニア層の引退など年代構成の変化を細かく補正した実態により近いものとなっている。よく「米雇用統計の平均時給を先取りする先行指標」などと言われ、6月時点では3.2%(3カ月移動平均)という水準にある。
 また、将来的に人々の賃上げ期待が高まるかどうかを考えるには、いつも本欄でも述べているように、米労働省が毎月発表している「米求人・労働異動調査」の結果の方をより重視したい。最新の6月分は、今週8日に発表される予定となっている。
 この6月分において、なおも米企業による「求人」が過去最高レベルにあることは想像に難くない。また、より良い職に就きたいからと自発的な「離職」に踏み切る人の数も依然として高止まりを続けているだろう。目に見える形で「明らかに賃金が上がってきた」というデータが得られるようになるのは来年(2018年)に入ってからということになるのかもしれないが、今はそこに至る目の前の経緯もキチンと追っておきたい。
 ただし、現実問題として足下のインフレ率が気にかかることもまた事実。今週の11日に7月の米消費者物価指数が発表となるが、その結果が弱めであれば再びドルに売り圧力がかかりやすくなるという点については一応警戒しておきたい。

 なお、先週末の米雇用統計発表後にドル買いが一旦急になったことで、同時にユーロ/ドルが大幅に下押すことになったという点も見逃せない。このところのユーロは、ドルもポンドも買えない状況にあって消去法的に買い上げられていたようなところもあり、投機筋による買いもかなり積み上がって過熱感が強まっていることから、当面はきっかけ一つで少々キツイ下げとなる可能性もないではないと見られる。
 先週のユーロ/ドルの週足ロウソクは少々長めの上ヒゲを伴う格好となった。長らく見られなかった形状であることだけは間違いない。
(08/07 09:15)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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