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第645回 なおもユーロ/ドルの下値リスクに要警戒!

2018年10月29日

 先週は週末26日の日本時間20時頃までドル・インデックスが急激に上昇し、あらためて8月半ばにつけた年初来高値水準とほぼ顔合わせする場面が見られた。
日・米株価が大きく下値を伸ばし、市場のリスク回避ムードが一時的にも極端に強まる状況にあって、これだけドル・インデックスが強含みになるということは、やはり目下は基本「ドル一強」の状況ということになるのだろう。振り返れば、一頃は「リスク回避の円買い」というワードがごく当たり前のように用いられる時期もあった。しかし、それはあくまで一過性のもの、言わば“ブームのようなもの”であったのかも知れない。
さすがに、先週末26日のNY時間入り後は一旦ドル買いが一服し、ドル/円が一時111円台前半の水準まで下押す場面も垣間見られてはいた。とはいえ、少し長い目で年末までのことを考えると、最終的にはドル需要がかなりタイトになって行くと見る向きが多いと考えられ、ドル/円の下値も自ずと限られることになろう。

いずれにしても、目先はドル/円で一定の投資成果を残すことがなかなか難しい状況にあると言え、その意味では、むしろ対ドルで弱気になびきやすくなっているユーロやポンドの売りで勝負するのが当面は策ということになるのかもしれない。
足下でユーロ/ドルが弱気になびきやすくなっているのは、やはりイタリアの財政問題と英国のEU離脱交渉の行方が、ともに不透明なままであることが大きく影響している。既知のとおり、欧州連合(EU)の欧州委員会は10月23日にイタリア政府から提出された予算案を突き返し、3週間以内の再提出を求めた。しかし、イタリア政府は欧州委員会からの修正要求に応じない姿勢を露わにした。
再提出の期限は11月13日とされ、その後3週間以内に欧州委員会が見解を示す予定となっているが、場合によっては欧州委員会が制裁措置の発動に向けた手続きに入る可能性もあり、いよいよ予断の許されない状況となってきている。
仮に、欧州委員会がイタリア政府に対して一定の妥協と譲歩の姿勢を示しても、結果的には「域内の財政規律が損なわれる」との観点からユーロにとっては弱気材料となる。最も望ましいのは、イタリア政府がバラマキ型の政策方針を取り下げることだが、典型的なポピュリズム政党で成るイタリア政府にとって、それは決して現実的な選択肢ではないはず。むしろ、いずれイタリアが「EU離脱」の道を選ぶ可能性というのも完全に否定することはできず、そう簡単に事態は収束しそうにない。

一方、英国のEU離脱交渉については、10月17日のEU首脳会議で示された「クリスマスまで」という円滑な離脱実現のための期限までに、合意のための具体的方向性が示されるかどうかが問う当面の焦点となる。
逆説的ではあるが、一つの「期限」が示されたということは、その期限に至るギリギリまで、明確な方向性が示されることには期待できないということになるのではないか。もちろん、最終的に「合意なき離脱」が回避される可能性は十分あると思われ、そうなれば一時的にもポンドを買い戻す動きが見られることとなろう。また、その時点でイタリアの財政問題は果たしてどうなっているのか。
年末にかけ、総じてユーロを取り巻く状況は実に複雑なものとなって行く可能性が高いと見られる。場合によっては、相当に強い売り圧力がかかる事態となる可能性も否定はできないため、そこは十分に警戒しておきたい。
すでに、ユーロ/ドルは足下で1.1400ドルを割り込む場面も見られており、当面は8月安値=1.1301ドルが意識されやすい。仮に同水準を下抜けた場合は、次に2017年1月安値から今年2月高値までの上げに対する61.8%押し=1.1200ドル処が意識されやすくなると見られる。
(10月29日 09:10)


※当コラムは毎週月曜日の更新です(月曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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