先週は、新型肺炎(コロナウイルス)の感染拡大に対する市場の警戒感が俄かに強まりつつある状態で週末を迎えることとなった。土日で市場が閉まっている間にも感染が拡がり続けると考えた投資家のなかには、週を跨ぐことなく手持ちのポジションを手仕舞った向きも少なくなかったに違いない。
先週23日に世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を見送ったことで一旦は市場に落ち着きが戻りかけたものの、その後、一層の感染拡大や死者数増加のニュースが伝わるごとに警戒モードは強まっている模様。一部には「パンデミック」なるワードを早々と持ち出すメディアもあり、どうしても投資マインドはリスク回避的にならざるを得ない。むろん、あらためてWHOが緊急事態宣言を行う可能性も低くないと見られ、そうなれば一旦は相場が荒れることとなろう。
やはり、暫くは「コロナ」関連のニュースが市場で最も関心を集めることとなり、場合によっては米・日株価やドル/円、クロス円が少々まとまった調整を交える可能性も大いにあると見られる。もともと、米国株全般や日本の半導体関連株、設備投資関連株、指数寄与度の高い銘柄などにあっては、目先的に高値警戒感が募りやすい状態が続いていた。
日経平均株価について言えば、やはり「因縁の2万4000円台」に到達したことで一旦は上値抵抗が意識されやすい状況にあった。よって、昨年10月初旬の安値や今年1月初旬の安値が試した75日移動平均線が位置する水準(現在は2万3200円処)まで一時的に調整する場面があっても不思議ではない。
まして、米・日企業の決算発表はこれからが本番。発表を控えて、その前に念のためポジションを一旦整理してこうとする向きもあろう。ただ、日本株に関しては足下のバリュエーションから考えても、当面の下値は自ずと限られることであろう。
またドル/円に関しても、一目均衡表の週足「雲」上限が位置する水準であり、なおかつ2015年6月高値と2018年10月高値を結ぶ長期レジスタンスライン(=三角保ち合いの上辺)が位置する水準でもある110.20-30円あたりでは、一旦押し戻される展開となっても至極当然と考えることができる。
ちなみに、かつてコロナウイルスに感染することで発症する「重症急性呼吸器症候群(=SARS)」が世界的期規模で集団発生したのは2002年11月~2003年7月であった。当時を振り返ってみると、その間のドル/円は大よそ120円を挟んでのもみ合いに終始しており、必ずしも大きく円高方向に振れたわけではなかった。
まして、かつて円が有していた「安全通貨としての強み」や「キャリー取引の対象としての魅力」は今や相当に薄らいでいる。なにしろ、アベノミクス以前の日本は長らく世界で唯一のデフレーションに陥っていたものだから、やけに「モノ」の価値よりも「カネ」の価値が高い状態が続いていた。もちろん、それも今や昔である。
また、近年は日本よりも欧州の金利の方が低い水準にあることから、円に代わってユーロがキャリー取引の対象となりやすい、つまり、市場全体がリスクオフのムードに包まれたとき、買い戻されやすいのもユーロということになる。
とまれ、週明けのドル/円が、いきなり一目均衡表の日足「雲」上限を下回る水準からのスタートとなったことは決して軽視できない。
執筆時は89日移動平均線を試す展開となっており、仮に同線を下抜けると次に200日移動平均線が位置する108.50円処を試すこととなろう。場合によっては、一目均衡表の週足「雲」下限が位置する108.00円処が意識されやすくなる可能性もあると見ておく必要もあろう。ともすると、一時的にもパニックが生じやすい状況にあるため、当面はポジション管理をいつも以上に厳格にしておきたい。
(01月27日 09:00)