先週末31日、それまで些か意外に思えるほどの底堅さを見せていた米株価とドルが急落する展開となった。その前日は、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスについてついに『緊急事態』を宣言したうえで「貿易や渡航制限までは推奨しない」などとしたことから、市場には「ひとまず安心」との見方が浮上する一幕もあった。
結果、一旦は米株価やドルが持ち直す動きを見せたものの、結局は31日の欧米時間にあらためて市場のリスク回避姿勢は俄かに強まることとなったのである。むろん、同日は週末と月末が重なったため、手持ちのポジションを一旦手仕舞っておこうとする向きも少なくなかったに違いない。また、週明けに春節休暇明けで再開する上海市場が一旦大きく下げる可能性もあることを警戒した動きも出たのであろう。
むろん、新型コロナウイルスの感染拡大が楽観視できないペースでその規模を膨らませていることへの警戒が何より大きいわけであるが、同時に本日(3日)以降の上海市場の相場展開とそれに対する他市場の反応からも目が離せない。
こうなってくると、せっかく米主要企業の決算が総じて好調な結果を示しても、それが市場になかなかプラスの効果をもたらしてくれない。もちろん、米企業の好決算は動かしようのない過去の事実なとなるのであるから、そこはしっかり押さえておきたい。いずれ足下のウイルス騒動が終息に向かい始める場面では、あらためてファンダメンタルズがモノを言いはじめるようになるに違いない。
なお、いまだ効果のほどは明らかではないが、一部報道では「オーストラリア南東部メルボルンのピーター・ドハーティー感染・免疫研究所が先週29日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの培養に成功したと発表した」などと伝えられている。培養したウイルスはWHOを通じて世界の研究機関と共有することとなり、ワクチンの早期開発につながる可能性もあるという。
相当の時間が必要となることは言うまでもないが、今後は同研究所に限らず世界中の様々な研究機関から新型ワクチン開発に関するニュースが逐一伝わってくるようになってゆくものと期待される。よって「ただ、いたずらに恐れる」ということは極力避け、いわゆる「正しく恐れる」という姿勢が重要となろう。
なお、市場で今後一時的にもパニックが拡がって、株式やドルなどに狼狽売りが生じるようになると仮定した場合、そのときに「どこで下げ止まるか」を考えるうえでは、多分にチャート上で確認できる幾つかのテクニカル・ポイントが重要になってくるということも再認識しておきたい。
まず、ドル/円については、先週末31日に一目均衡表の週足「雲」下限(現在は107.95円)を試すような動きとなった点が印象深い。この週足「雲」下限は、当面の下値の目安の一つとなろう。なお、仮に同水準を下抜けた場合は、次に週足の基準線(現在は107.37円)が意識されやすくなると見られる。
一方、ユーロド/ルは先週末31日に31週移動平均線を試すような格好で一気に値を戻す動きを見せた。これは、多分に週末&月末のポジション調整が主たる要因であると考えられ、一時的なユーロ高・ドル安に過ぎないと見られる。
先週31日、欧州連合(EU)が発表した10-12月期のユーロ圏GDP(速報値)は実質で前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と、あまりにも無残な結果に終わった。中心的存在であるドイツで製造業を中心に時間短縮勤務を導入する企業が増え続けており、受注激減&生産調整の傾向が一段と強まってきていることも大きいと見られる。
よって、ここはより戦略的にユーロ/ドルに対して戻り売りを仕掛けるタイミングを計りたいと個人的には考える。1.1100ドル処というのは、一つの上値抵抗として意識される可能性もあると言えるだろう。
(02月03日 09:05)