先週10日、トランプ米大統領は新型コロナウイルスによる国内の死者数について、当初示した「最低10万人」という予測を大幅に下回るという見通しを示した。
周囲の通り、これは米国立アレルギー研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が9日に「米国の死者数が6万人程度に留まる可能性がある」と述べたことを受けてのものと考えていい。いまや“時の人”となったファウチ所長は、先週8日にも「状況は来週にも好転し始める可能性がある」と述べており、おかげで市場全体のムードは一頃より大分落ち着いてきている。
また、もう一人の“時の人”である米NY州のクオモ知事も先週6日以降、「新型肺炎の感染ペースは減速している」、「死者数は遅行指標」などと述べており、こうした見解が市場におけるピークアウトへの期待感を増幅させている。
もちろん、米国をはじめとする世界の主要な国や地域において其々の政府・当局が非常に大胆かつ大規模な対応策を矢継ぎ早に打ち出してきていることも市場のムードを好転させることに大きく貢献しており、結果、先週の4営業日でNYダウ平均は2666ドルもの上昇を見ることとなった。ことに、米連邦準備理事会(FRB)が9日に打ち出した総額2兆3000億ドルに上る緊急資金供給のインパクトは格別に大きく、市場参加者には相当な安心感がもたらされることとなった。
もっとも、先週の米国株の大幅高については「少々オーバースピード気味ではないか」と思われるところもないではない。足下で恐怖指数(VIX指数)が40台前半のレベルにまで低下してきているとはいえ、いまだ平時の水準に比べれば極めて高い“危険域”にあることも事実である。
前述したとおり、米国内の死者数は「当初言われていた数よりずっと少なくなる」見通しであるとされ、それは米政府の行動指針が適切であったことの証明と言えるのかも知れない。そこで警戒しておきたいのは、トランプ米大統領が次の“手柄”を急ごうとしやしないかという点である。実際、すでに経済活動の再開について強い意欲を見せているようであり、早速、再開に向けた諮問委員会を新たに設置することも明らかにしている。
それは、目先的には市場でリスクオンの材料と捉えられるかもしれないが、万が一にも感染拡大の勢いがぶり返すなどということがあれば、それは再び足下のムードを一変させかねないリスクとして市場に暗雲をもたらすこととなりかねない。実際、ファウチ所長も「時期尚早な経済活動の再開は、感染者増加の第2波を招きかねない」と警鐘を鳴らしており、今後の米政権の取り組み姿勢からはなおも目が離せない。
とまれ、とりあえず足下の外国為替相場は徐々に落ち着きを取り戻し始めているように思われる。ドル/円については、今のところ200日移動平均線(200日線)が下値をサポートする格好となっており、一方で上値は一目均衡表の週足「雲」上限が位置するところで押さえられた格好となっている。
今週は、一つに「米株高のペースが持続するかどうか」が注目ポイントになると考えられ、とりわけ先週の大幅上昇に反動が生じかねない点に警戒を怠りなくしておきたい。場合により、リスクオンのムードが多少なり後退する可能性もあることを考慮し、先週と同様に200日線(現在は108.34円)を軸として上下に其々1.5円程度の値幅の中での推移になるものと見ておきたい。
一方、ユーロ/ドルについては前回「1.0800ドル割れの水準では下げ渋りやすく、目先は多少のリバウンドもあり得るが、その上値余地はせいぜい1.0900ドル台前半あたりまで」と想定したが、案の定、週足の実体部分は1.0807-1.0936ドルとなった。
まだ、多少は戻り余地が残されているようだが、やはり1.100ドル処は上値の重しになりやすいと見られる。基本的には戻り売り姿勢で臨みたい。
(04月13日 08:45)