FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

外貨投資 転ばぬ先の智慧

最新の記事

第735回 「ドル一段安」との見方には慎重でありたい…

2020年11月30日

 先週最大のトピックは、何といってもNYダウ平均が3万ドルの大台に乗せる動きとなったことであろう。加えて、週末27日のナスダック総合指数やフィラデルフィア半導体株(SOX)指数が、ともに史上最高値を更新したことも見逃せない。27日に米モデルナ社の株価が前営業日比で16.35%もの上昇を見たことからしても、やはりワクチンへの期待は大きいと見られる。
 少々先走り過ぎと思えなくもないのであるが、もはや市場は来年の景気回復に対する楽観を強めている模様。ただ、目先は暫く巣ごもり需要が続くとの見方も共存しており、キャタピラーなどの景気敏感株が買われる一方で、ネットフリックスなど巣ごもり関連の銘柄も同時に買われているところが興味深い。要は、相変わらずの「いいところ取り」であり、それだけ市場のリスク選好ムードは強いという点が何より注目される。その結果として、市場はリスク選好のドル売りになびきやすくなっていると見る向きが多い。

 全体にドル安期待が根強いなか、先週のドル/円は再び104円を割り込む場面が見られていた。コロナの感染拡大による景気の短期的な回復鈍化に対する懸念から、米10年債利回りが週末にかけて0.83%台まで低下したことも一因であろう。
 週初には、一旦大きく上昇して一時的に104.76円まで上値を試す場面もあったが、これは「感謝祭前のポジション調整に伴う円売り戻し」が要因として大きいと見る向きも少なくない。むろん、結局は105円台を試すこともできずに失速したということ自体が、ドル/円の売りを誘っている面もあろう。とはいえ、このまま11月6日安値の103.18円をも下抜けて103円割れを試すといった見方には、まだ与しにくい。
 また、次の米財務長官に前FRB議長のジャネット・イエレン氏を充てる人事が有力となってきたこともドル安の一因とされている模様である。
 一つには「イエレン氏が米財務長官に就任すれば金融政策と財政政策の連携がグンと強まり、米国経済のコロナ禍からの回復がより確実なものになる」との読みから、リスク選好のドル売りが強まるという解釈が成り立つのであろう。
 加えて、かねてよりハト派で知られるイエレン氏であるだけに、それを単純にドル安要因と捉える向きもあるようだ。ただし、イエレン氏がFRB議長を務めていた当時(2014年2月~2018年2月)のことを思い起こすと、その間、必ずしもドル安一辺倒ではなかったことも事実である。実際、イエレン氏はただ単にハト派の姿勢を頑なまでに貫こうとしているわけではないと見る。むしろ非常に現実的な人物であると考えられることから、いたずらに「ハト派でドル安主義」と決めつけることには慎重でありたい。

 一方で、ユーロ/ドルがやけに強気の展開を続けていることも、全体的なドル弱気の見方に加勢している。これは、言うまでもなく「ユーロ高」ではなくて「ドル安」なのであるが、とにかく市場としては「動くものにつきたい」、いや「動かせるものを動かしたい」というところなのではないか。
 足下のユーロ/ドルの動きには強い違和感を禁じ得ないが、市場には逆らえない。とはいえ、ユーロを取り巻く現状の厳しさについても一応は押さえておきたいと考える。
 目下の欧州では全般にウイルス感染拡大の勢いが増しており、都市封鎖に踏み切る地域が相次いでいる。加えて、「欧州復興基金」の成立が遅れていること、いまだ英・EUの通商交渉が合意に至っていないことなど、一段の上値追いに慎重さが求められる要素は実のところ少なくないのである。
 足下の勢いを考えれば、ユーロ/ドルが年内に一旦1.20ドル台を回復する可能性は十分にあると見られる。とはいえ、前述した復興基金の成立や英・EU間の通商交渉の行方などによっては、年末から年明けにかけて波乱含みとなる可能性も大いにあると心得ておきたい。
(11月30日 08:30)

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会

このページの先頭へ

FX(外為取引)・証券のマネパHOME > マーケット情報 > FXコラム > 外貨投資 転ばぬ先の智慧 > 第735回 「ドル一段安」との見方には慎重でありたい…