前回更新分の本欄では、ドル/円について「109.00-10円処まで下値を試しに行く可能性もあろう」と述べたが、実際、先週19日には一時109.07円まで下押す場面を垣間見た。同水準は、4月安値から直近高値までの上げに対する61.8%押しの節目であり、また一目均衡表の日足「雲」下限が位置するところである。
ドル/円がそこまで一時的に値を下げたのは、19日のNYダウ平均が前日終値比で一時900ドル超の下げとなったことを受けて米10年債利回りが一時1.20%を割り込む水準まで低下したことにあったが、これはいくらなんでも行き過ぎである。市場では「デルタ株の感染再拡大で景気回復ペースへの懸念が強まっている」などといった声も聞かれていたが、それは後付けの講釈に過ぎないと言えよう。
どう考えても、1.10%台という米10年債利回りが米国の景気実態を正しく反映しているとは思えない。なにしろ、米国では今夏の旅行関係支出がコロナ前の2019年同時期に比べて5割増えると見込まれているのだ。いわゆる「リベンジ旅行」が急増し、人気のハワイ州ではマウイ市長が「(旅行予約受付の)一旦停止が必要」と叫んでいる。また、英国で19日から大部分の行動規制が解除されたことも既知のとおりである。
市場関係者のなかには、米国の中小型株指数である「ラッセル2000」が5月半ばに直近高値をつけてから頭打ちの状態となっていることをして、「米国の景気回復はピークを過ぎた」などと解釈する向きもあるようだが、それも大いに疑わしい。同指数は、昨年秋ごろからNYダウ平均やS&P500指数などを大きくアウトパフォームしていため、足元で当然の調整が入っているに過ぎないと個人的には考える。
日々発表されている米主要企業の4-6月期決算は、事前の市場予想を上回る好結が相次いでおり、結果として先週23日のNYダウ平均は史上最高値を塗り替えるに至った。やはり、基本的にはリスクオンの大きな流れが継続しているわけで、実際、先週末にかけてはドル/円も再び21日移動平均線(21日線)を上抜ける強い動きとなった。
先週21日に日本株は4連休前の取引を終えたが、その後にNYダウ平均は合計で550ドルほどの上昇を見ている。そして、その間にCME日経平均先物は500円ほどの値上がりとなった。この週明けの日経平均株価は、とりあえず2万8000円台回復にトライするものと見られ、調整一巡から切り返す動きが鮮明になってくれば、あらためて市場にはリスクオンのムードが広がりやすい。
むろん、それはドル/円の戻りに加勢することとなろう。さしあたり、ドル/円は7月14日高値=110.70円処を試し、上抜ければ111.00円台乗せに再びトライすることになると見る。少し長い目で見れば、7月2日高値=111.66円を試しに行く可能性も大いにあると見ていいのではないか。
一方、ユーロ/ドルは前回更新分の本欄で述べたとおり、なおも昨年11月安値と今年3月安値を結ぶサポートラインを試す状況を続けている。上値は21日線に押さえられ続けており、遅かれ早かれ前記のサポートラインを下抜ける可能性が高いと見る。
既知のとおり、先週はECB理事会が行われ、先行きの政策指針である「フォワードガイダンス」が変更された。新ガイダンスは「景気を支えるために粘り強く緩和を継続することを約束する」という事前予想通りの内容でサプライズはなかったが、今後しばらくユーロの上値を押さえることにつながりやすい内容であったことは確かである。
6月のFOMC以来、ユーロ/ドルの下げトレンドは継続しており、目下は前述のサポートラインとともに1.1750-60ドル処の節目が意識されやすくなっている。これをクリアに下抜けると、まずは3月安値の1.1704ドルが試され、同水準をも下抜けると1.1650-060ドル処の節目まで一気に下押す可能性も十分あると見る。
(07月26日 07:00)