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第786回 もはや主要中銀の関心は「コロナ」より「インフレ」

2021年12月20日

 周知のとおり、先週は米・欧・英・日で中銀イベントが立て続けに行われ、其々の結果に対して市場は少々敏感に反応した。
 米連連邦公開市場委員会(FOMC)については、事前に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長から一定のガイダンスが示されていたことにより、結果自体に対する反応はある程度限られた。予想よりも些かタカ派寄りの印象であったことも事実だが、とりあえず市場は「噂で買って事実で売り」とばかりに一旦ドル売りで反応した。それも、事前の想定の範囲内の動きであったと言える。
 驚いたのは、英中銀が金融政策委員会(MPC)において0.15%の利上げを決定したことである。目下のところ、英国における新型コロナウイルスの新規感染者はパンデミックが始まって以降で最多となっており、行動規制などによる経済への影響も危惧されていることから「今回も利上げは見送られる」というのが大方の見方であった。
 このサプライズは、英中銀のベイリー総裁による事前の市場との「対話」が適切ではなかったことによって生じたものと言って差し支えないと思われる。ベイリー氏には、前回の会合において市場にサプライズを生じさせた“前科”もあり、今後は同氏の言動に対する向き合い方を慎重に考えて行かねばなるまい。
 また、欧州中央銀行(ECB)理事会の結果も、市場にとっては些かサプライズであった。ECBは、今回の会合でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の来年3月終了後の具体策を示してきており、事前の市場の期待ほどハト派的ではなかった。

 総じて言えることは、ここにきて米・欧・英の中銀がともに「コロナへの対応」を優先する姿勢から目の前で進む「インフレへの対応」の方をより重要視する姿勢にシフトし始めたということである。このことは、ECBのラガルド総裁が「多くの人々がワクチン接種を済ませ、ブースター(追加免疫)接種のキャンペーンも勢いを増している。結果、パンデミックの波とそれに伴う行動制限に社会はうまく対応するようになり、経済への打撃は減退している」と述べたことにも如実に表れていると言えよう。
 ただ、現実的に目の前ではオミクロン株の爆発的とも言える感染拡大が続いているわけであり、たとえ社会がウイルスとの「共存」の方法を徐々に把握しつつあるとはいえ、実体経済が多少なりのダメージを被ることは免れ得ない。実際、そのことを危惧して米株価は先週末にかけて大幅な下げを演じているわけであり、結果として市場のムードがリスク回避に傾きやすくなっていることもまた事実である。

 こうしたことを踏まえて考えると、まずオミクロン禍でリスク・オフならドルは買われやすく、結局のところポンドやユーロの戻りは限られやすい。
 実際、先週17日のユーロ/ドルは同日高値(=1.1349ドル)から100ポイント超の下落となり、再び21日移動平均線を下抜けることとなった。前回更新分の本欄で「当面はユーロ/ドルの1.1300-50ドル処で戻り売りのチャンスをうかがいたい」と述べたが、今後も戻り売りを基本に臨みたいと考える。
 なお、17日にはポンド/ドルも同日高値から100ポイント超の下落を見た。ポンドに関しては「来年2月に追加利上げを実施する可能性」との声も聞かれ、当面の下値余地は限られる可能性もあるが、そのぶんユーロ/ポンドの下げ余地が広がることでユーロ/ドルの上値を重くする可能性も考慮しておきたい。
 一方、ドル/円は17日に一時113円台前半まで下落する場面があったものの、最終的には113.70-75円処まで値を戻しており、これもリスク回避のドル買いによるところが小さくないと見られる。先週16日に発表された日本の11月の貿易収支が4カ月連続で赤字となったことも考え併せると、当面は極端に円高方向に振れることも考えづらい。目先は114.20-30円処を超えられるかどうかが注目される。

(12月20日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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