先週の最大のトピックは、米食品医薬品局(FDA)が米ファイザー製の新型コロナウイルス経口薬(パクスロビド)に続いて、メルク製の経口薬(モルヌピラビル)についても緊急使用許可(EUA)を出したということになるだろう。
両社の薬は、世界中で感染拡大が続いているオミクロン株に対しても抗ウイルス活性を示すとされる。既知のとおり、オミクロン株は「感染力は強いものの、重症化リスクは低い」と見られており、さらに「ワクチンのブースター接種は、オミクロン株に対する抗体を大幅に増加させる」との情報も各製薬メーカーから発信されている。
こうした情報が市場の不安をかなり和らげている。結果、市場のリスク回避ムードは後退し、米10年債利回りは1.5%付近まで再び上昇。また、米株市場ではS&P5500種が先週23日に史上最高値を更新するなど、強気の展開が見られている。
とはいえ、足元で必ずしもドル買いの勢いが強まっているわけではない。実際、先週はポンド/ドルが21~23日にかけて1.3200ドル処から1.3400ドル処まで大きく値を戻す動きとなり、ユーロ/ドルも1.1300ドルを挟んでもみ合う展開となった。
一つには、オミクロンに対する警戒が和らいだことによって「リスク回避のドル買い」の動きが後退していることがあると見られる。加えて、足元の市場ではクリスマス休暇や年末に向けたポジション調整の動き、つまりポンドやユーロを一旦買い戻そうとする動きが主体になっているということもある。
なにしろ、英国や欧州では新規のコロナ感染者数が爆発的に増加していることからロックダウンの可能性も指摘され、2022年の第1四半期はマイナス成長に陥るとの見方まで出てきている。さらに、このところの天然ガス価格の高騰がポンドやユーロを圧迫すると見る向きもある。そもそも、英国についてはジョンソン首相の求心力低下などといった「政治リスク」を警戒視する向きも少なくない。
それでもポンドやユーロが買い戻されるのは、ひとえに年末要因によるところが大きいということになりそうである。むろん、そうであるとするならば、ポンド/ドルやユーロ/ドルの戻りは自ずと限られるということになるだろう。
ポンド/ドルは、10月20日高値から12月8日安値までの下げに対する38.2%戻しの水準(=1.3420-30ドル処)までの戻りを見ており、そろそろ戻り一巡となってもおかしくはない。仮に、直近高値=1.3437ドルを上抜けて一段の上値を試す動きになったとしても、やはり1.3500ドル処や一目均衡表の日足「雲」下限の水準における上値抵抗は相当に強いと見られる。よって、当面は戻り売りのチャンスをうかがいたい。
また、ユーロ/ドルについては、前々回と前回の更新分でも指摘したように1.1350ドル処での上値抵抗が相変わらず強い。同水準で戻り売りを仕掛けて1.1250ドル処で買い戻すというストラテジーは11月30日以降幾度も成功しており、今後も当面は同様のスタンスで臨みたいと考える。
一方、ドル/円は「リスク選好のドル売り」に対して「リスク選好の円売り」が勝る格好で徐々に値を戻す動きとなっている。基本的には上向きのバイアスがかかっており、下値は依然として一目均衡表の日足「雲」上限が支える格好となっている。
前回は「114.20-30円処を超えられるかどうかに注目」と述べたが、すでに同水準を上抜ける動きとなってきており、今後は同水準が下値の目安として意識されやすいと見る。
年内は基本的に小動きが続く可能性が高いと思われるが、年明けに向けて115円台乗せから11月24日高値=115.49円を試す動きが見られてもおかしくはないだろう。
振り返れば、2021年のドル/円は102円台からスタートし、年を通じて基本強気の展開を続けた。3月31日高値から9月22日安値までの調整局面はすでに終了し、目下は強気トレンドの最中にあると見ていいだろう。
(12月27日 07:00)