FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

外貨投資 転ばぬ先の智慧

最新の記事

第805回 米国株の乱高下に一喜一憂せず冷静に…

2022年05月23日

 米国株市場に生じている波乱が外国為替市場にも大いに影響を及ぼしている。

 前回更新分の本欄でも触れたように、先々週は「ステーブルコイン騒動」が市場を動揺させ、先週はウォルマートやターゲットなど、米小売り大手が発表した2-4月決算の厳しい結果が米国株市場を再び失望させた模様である。
 確かに、ターゲットの純利益が前年同期比52%減となったことは驚きではあった。しかし、売上高が市場予想を上回る4%の伸びとなったことなどを勘案すると、足元の米国株市場全体の反応は少々過剰気味であったとも言えるだろう。
 米小売全般については、輸送費や人件費などが重荷になっていることも事実だが、低気温が続いた影響やそもそものマーケティング・商品戦略の誤りといった要素があったことも否定はできない。つまり、必ずしも米国内の消費マインドが著しく低下しているわけではない。実際、米商務省が17日発表した4月の小売売上高は前月から0.9%増え、4カ月連続の増加となった。高インフレにも拘らず消費は堅調さを維持したのだ。

 不確実性を嫌う市場で、今しばらく不安定な展開が続く可能性はある。先週末20日のNYダウ平均は、日中の高値から安値まで880ドルも値動きした。ただ、そんな中で一時的にも過度に強まる「リスク回避の動き」については、少し引いたところで冷静に見つめることが重要となる。徐々に落ち着きを取り戻す状況を見定めたい。
 目下の市場は、耳目に飛び込んでくる様々な「情報」に対して過度に敏感になってしまっており、そのために瞬間、瞬間で誤った反応を見せることが多い。多くの場合、それはほどなく修正されることとなるため、初期反応にヘタについて行こうとすると逆に持っていかれるといったケースも頻繁に見られる。

 ドル/円の先々週12日の安値=127.52円は、3月末のポジション調整時に一時的にもつけた安値=121.28円から、5月9日につけた直近高値=131.35円までの上昇に対する38.2%押しの水準であり、ここで「ステーブルコイン騒動」に伴う市場の動揺は一旦落ち着いた。先週19日の安値=127.02円はそれを一時的に下回ったが、同水準は4月27日につけた日銀会合前の安値であり、ここは重要な節目の一つと捉えておきたい。
 奇しくも、翌20日まで開かれていた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の会見で、日銀の黒田総裁は「イールド・カーブ・コントロール(YCC)政策を軸とした強力な金融緩和政策を粘り強く続ける」との考えを改めて示し、図らずも円買い戻しの動きをけん制する格好となった。そうしたことも勘案した上で、今週のドル/円は127.60円処を軸とした127.00-128.20円のレンジ内での動きを続けると見ておきたい。

 ユーロ/ドルは、先週19日に公開された欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨の内容から「7月にも利上げに踏み切る」との期待が市場で盛り上がり、足元で一定の戻りを試す動きとなっている。結果、先週末にかけて1.0600ドル処を試す展開となったわけであるが、今後の上値余地は自ずと限られると見ておきたい。
 足元で燻る米国経済のリセッション入りはあくまで「懸念」に過ぎないが、欧州の成長鈍化観測は目の前に突き付けられた「現実」である。ECBが近く利上げに踏み切るのは間違いなさそうだが、その一方で米連邦準備制度理事会(FRB)は一段と積極的な引き締め方針を鮮明にする。よって、結局はユーロ/ドルの戻りも限られる。
 そもそも、米国景気の力強さに比してユーロ圏の域内景気は先細り観測が強い。さしあたり、ECBはインフレ抑制を優先せざるを得ないが、ほどなく行き詰まる可能性が高い。
 仮に、ユーロ/ドルが1.06ドル処をクリアに上抜けてくれば、一旦は1.06ドル台後半の水準を試す可能性もあろうが、仮にそうなれば戻り売りスタンスで臨みたい。
 (05月23日 07:00)

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会

このページの先頭へ

FX(外為取引)・証券のマネパHOME > マーケット情報 > FXコラム > 外貨投資 転ばぬ先の智慧 > 第805回 米国株の乱高下に一喜一憂せず冷静に…