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第814回 ドル/円の調整はひとまず一巡!?

2022年08月01日

 兎にも角にも、今後は米連邦準備制度理事会(FRB)による政策の“手綱さばき”が多くを決するということになりそうである。
 一つ間違えば「オーバーキル」の状態に陥りかねないとの懸念が燻るなか、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエルFRB議長が放った“I do not think that the U.S. is currently in a recession,(米国が景気後退に向かっているとは思わない)”との言葉は、市場に相応の安心感をもたらした。
 後に、イエレン米財務長官も「大幅な景気減速と雇用喪失は見られない」と述べており、確かに足元の米雇用の底堅さは「為す術もなく不況に陥っていくといった状況にはなさそう」との見方を支持するものと言える。
 4-6月期の米実質国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナスとなったことは事実だが、いわゆる「リセッション入り」を定義する前提が過去とは大きく異なることもまた事実。むしろ、市場ではFRBの利上げペース鈍化への期待から米株価が大きく値を戻す動きも見られており、株価の堅調推移が市場にリスクオンのムードをもたらしてもいる。
 前回更新分の本欄で「政策金利の引き上げ幅は9月が0.5%ポイント、11月と12月は0.25%ポイントになると見る向きが多い」とのエコノミスト調査の結果を示したが、先週のパウエル議長による「利上げペースを緩めていくことが適切となる可能性もありそうだ」との発言は、当該調査の結果を追認するような格好となった。

 こうした状況下で、先週は週末にかけてドル/円が一時132円台半ばの水準まで大きく下押す動きを見せた。28日の日足ロウソクはかなり長めの陰線を描き、結果的に21日移動平均線から明確に下放れる展開になったのと同時に、一目均衡表(日足)の「遅行線」が日々線を下抜ける弱気の動きも見られた。
 さらに、翌29日には海外ファンド勢が意識しているとされる50日移動平均線(50日線)を下抜ける動きとなり、テクニカル的な見切り売りが加速した模様。ちなみに、ドル/円が50日線を下回るのは3月初旬以来のこととなる。
 その後、一旦は日足「雲」上限の水準を下回る場面も垣間見られたが、そこからは切り返してとりあえず同水準が下値をサポートする格好となっている。もちろん、そこには月末のポジション調整に絡んだ動きも関わっていたものと考えられる。
 このような複合的要因によって生じたドル/円の調整は、日足「雲」上限を試したことでひとまず一巡した可能性が高いと見る。少なくとも、昨年9月下旬以降長らくドル/円が日足「雲」を下抜ける動きは見られていない。また、先週末29日の値動きは5月24日安値から7月14日高値までの上昇に対する半値押しの水準を試す動きでもあった。
 つまり、数々の重要な節目に到達したことで、とりあえずドル/円はテクニカル的に下げ渋る状況となっており、あらためて50日線(現在は134.30円処)を上抜ける動きが見られれば、そこから136円前後の水準までスルスルと値を戻してもおかしくないと見る。

 一方、ユーロ/ドルは相変わらず方向感に乏しい。29日に発表された7月のユーロ圏消費者物価指数(HICP・速報値)は、総合指数で前年比+8.9%と過去最高の伸びを示し、当然、欧州中央銀行(ECB)は追加利上げの必要に迫られることとなるが、その一方でエネルギー危機が深刻な景気後退をもたらすとの懸念も依然として拭えない。
 そんな板挟み状態の下でユーロ/ドルに方向感が出ないのは道理でもあり、今しばらくは1.0100-1.0250ドル処のレンジ内での値動きを続ける可能性が高いと見られる。レンジ上限付近での上値抵抗はかなり強く、同水準での戻り売りがしばらくは有効となろう。
 先週大きく低下した米10年債利回りが反発してくる可能性も高いと思われ、再びドルが強含みとなれば、そのぶんユーロ/ドルの下値余地はあらためて拡がると見る。

(08月01日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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