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第401回 ~ドル安の分岐点 ~

2020年09月17日

「菅首相決定で日本買いだ!」、そんな声が市場に飛び交ったように聞こえた。それが今日の円高の一つの理由と考えてもいいだろう。アベノミクスの継続ではないか? とすれば円安になるのではないか? と連想したいところだ。しかし安倍首相が就任した時とは、経済環境が全く異なっていることが為替で影響が出た。

2013年のアベノミクス決定時は、利下げ・財政拡大で、円安、株高になったが、すでに歴史的な水準まで実行している今の金融・経済情勢ではその両方に対して、更なるテコ入れはできない状況だ。そこで、日本買い=円資産を持つことが、日本株買い、円買いとなったとみるべきだろう。結果、ドル円が7月31日以来初めて105円を下回った。英ポンドが9/10以来となる1.30まで値を上げ、ユーロも1.18後半に上昇している。ドルインデックスが93台から92半ばまで低下していることから、ドル全面安ともいえる相場展開だ。

そこで、ドル円のレンジは、7/24以降に顕著になった105.50円~106.50円(中心レンジ)から、円高方向の105円~106円(同)に変わったと判断した。ただ、今回の円高の元は、米国景気とFRBの金融政策に起因したドル安の流れだ。そこでこの心理が修正されれば、逆回転することもありうる。その意味で105円割れは、時には起ころうが、恒常化することはないだろうと考えている。

それにしても、今の米ドルは、コロナ禍とトランプ政治姿勢では簡単にリスクオフが起こることを前提にしなければならないという立場にある。「不透明、不安定」が一番の敵と言える金融市場にとって、米大統領選挙は一番の不安定材料だ。その最初の関門が、9/29に予定されているトランプ対バイデンによる1対1のテレビ討論会である。合計3回の討論会が設定されているが、過去に選挙結果を大きく左右したという実績があるので、ここで事実上決定されるのではないかと注目度がかなり高い。この点については来週取り上げたい。

さて、ドル安の最初のポイントは米国景気である。毎月の経済統計を見ると、概略的では、5月発表(4月の指標)を底に、6月から急回復し、特に、消費、住宅販売はV字回復に近い勢いを見せた。しかし雇用者数は、まだ減少した分(22.2百万人)の約半分(10.6百万人)の48%しか戻っていないことで、全体としてはV字回復でなくナイキ型(✔)回復が優勢となっている。

このような回復の勢いに懐疑的な心理がある中で、今日発表になったのが小売売上高。予想の+1.0%(前月比)に対し、実績は +0.6%と下回り、前月の改訂(+1.2%から+0.9%へ減少)を加味すると、わずかの0.3%の増加であった。この結果に対し、失業者に対するコロナ支援が6月で期限切れとなったことが大きな要因であり、マイナスではないので心配いらないとの見方もある一方、先月まではV字回復に近かったが、その勢いはそがれてしまったことを懸念する見方もある。これが期待外れのドル安に結びついている。

今週からは、住宅関連指標や、消費者信頼感、地方連銀の製造業景況感など、景気の実態を表す指標が続々と出てくる。特に住宅関連は、先月まさにV字回復を示しているので、この勢いが継続しているのか、大いに注目していかなければならない。

一方、FOMCの方向性が緩和基調であることが、もう一つのドル安要因である。先月の中央銀行シンポジウム(ジャクソンホール会議)でパウエル議長が明らかにした物価目標の実質水準引き上げ(ターゲットの2%を絶対基準でなく、平均でとらえる方式に変更)が、ゼロ金利の長期化を示唆すると判断されたことだ。今回、より詳細の説明があると期待されている。そして同時に、現在2022年まで示されている経済見通しやドットチャートで、今回は2023年まで延長した見通しが示されるため、ゼロ金利がどこまで延ばされるかも注目点だ。

さて、今後1週間の予想レンジは、ドル円は米国の金融緩和基調を受けて、先週より若干の円高の104.80~106.80円。またユーロは、対ドルでは1.1800~1.2000、対円では前週より円高の124.00~126.00円。英ポンド/ドルについては、下げ止まりの1.2800-1.3100と予想する。
(2020/9/16, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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