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市場養生訓

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第831回

2020年09月15日

 トレンドの転換点で売買出来たら為替取引は簡単だ。たくさん利益を上げられる。つまりそれはとても難しいことなのだが、我々はそうした売買をしたいと常に願っている。
 実際はトレンドの転換点がわからず、新たなトレンドがしばらく続いた後で気づいてそのトレンドに乗る。その気づきは早ければ早いほどいい。遅いとトレンドの長さにもよるが、次のトレンドの転換点に近くなることもあるからだ。
 最近のポンドの動きはこうしたトレンド転換のよい例だ。ポンドはここ数年間BREXITが主要な為替変動要因になっていた。ところがここ数か月BREXITは為替変動要因として作用しなかった。BREXITを巡るプロセスにネガティブな情報が出てもポンドドルは上昇を続けた。ドルサイドの要因がポンドを牽引した。ドル金利の長期低下傾向の定着と全般的なドル安傾向だ。
 ところが先週あたりから突然トレンドが変わった。BREXITが再び主要な為替変動要因として浮上したのだ。英国はEU離脱を正式に決め、現在移行期間にあるがその間に貿易協定などでEUとの合意を成立させることになっている。だが合意が成立しない見込みが急に高まった。英国が方針を変え、これまでの基本合意の一部を変える法案を出したからだ。EUは反発し、法案の撤回を申し入れた。ポンドは上昇から下落へと転換した。
 実際の値動きを見ると、ポンドドルは今月初めに年初来高値の1.34台をつけた。だが先週から急落して1.27台まで下落した。直近では1.28台半ば水準だ。1.34台でポンドを売った人はラッキーだが、BREXITが再度要因になると思って売った人は少ないはずだ。そう思って売った人はそれまでBREXITでポンドを売って損切りを何回も繰り返した人に違いない。それまでポンドを買っていてこの転換点を捉えるのは至難の業だ。
 それにしても英国の首相は今回のEUとの交渉期限を10月半ばに設定したが、それが交渉の駆け引きなのか、合意なき離脱でもよしと確信しているのかわからない。いずれにせよ合意なき離脱の可能性が高まった。そうなるとドルポンドはさらに下落を加速することになる。
 11月の米国大統領選と相まって、ポンドドルのボラティリティーは高まっている。
 それにECBはユーロ高を懸念している。米国もドル安は大統領が望む展開だ。
今後通貨を巡るぶつかり合いがあちこちで見られる可能性がある。為替の季節の到来か。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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