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市場養生訓

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第828回

2020年08月26日

 今週は毎年夏の恒例行事のジャクソンホールの会議がある。FEDの主催で各国の中央銀行総裁やエコノミストたちが参加する。今後の金融政策についての指針やヒントが示されることが多いので、毎年市場が注目するイベントの一つだ。だが今年の参加者はジャクソンホールの長閑な景色を見ることはない。会議はオンラインで行われる。
 FEDのパウエル議長は長引く低インフレ状況に対して新機軸を打ち出すのか、景気が回復しても失業率は上昇すると見るECBは一層の金融緩和策に言及するか、BOEの総裁はマイナス金利も政策のオプションとしたが、来年あたりに実行するようなヒントを示すか、政策の出尽くし感のある日銀が一層の景気後退に対してどのような見解を持つのか。
 中央銀行に対する見方は様々だが、今回のコロナウイルスの感染拡大の中で中央銀行の果たした役割は大きかった。金融緩和政策の拡大はもちろんだが、FEDの各国中央銀行に対するドル供給は金融市場の危機を抑えた。世界で基軸通貨ドルに対する需要が急増した中でドル金利は上昇し、市場はドル不足に陥った。前回の金融危機の時はそれが金融機関の倒産に繋がったが、今回はドル供給のタイミングがよく、そうした事態を防いだ。
 これは中央銀行間のスワップ協定によるもので、FEDはドルを供給する代わりに各国の中銀はFEDに自国通貨を供給する。互いの通貨を貸し付け合うかたちだ。
 各国の中銀はFEDから供給されたドルを自国の金融機関や企業に貸し付けるが、3月に復活したスワップ協定によるドル供給は5月のピーク時には残高が4500億ドル程度に増えた。貸し付けは毎日行われたが、市場のドル不足が落ち着くにつれて貸し付けは6月には週三回になり、8月には週一度になった。残高も1000億ドルに減少した。
 ところで3月にドル不足になったとき、ドル金利が上がり、為替もドル高が進んだ。そしてスワップ協定の実行とともにドルは下落を始めた。そしでドルの主要通貨のバスケットに対するレートは12%下落した。
 このドル下落の要因はFEDのドル供給のためとの見方が市場では通説だが、厳密にいうとこれは違う。ドルをたくさん供給してもドルの為替レートが下がるわけではない。これは貸借の取引で為替の取引でないからだ。為替の需給には無関係だ。FEDがドルを売って円を買ったわけではない。
 例えば日本の金融機関が米国債に投資する際、円を売って米国債を買えばドルの為替需要が増え、為替はドル高に作用する。だがドルを市場から借りて米国債を買う場合は、為替の需給には無関係だ。
 但しFEDからドル供給を受けた中銀が、市場でドルを売って自国通貨を買う場合は為替の需給は変化して為替レートに影響する。これまでの通貨危機の時、その対策でスワップ協定が使われたことがあったが、それはこのケースだ。
 では今回のドルの下落の要因は何か。ドル金利の下落だ。FEDのドル供給によってドル金利が下がり、その状況を利用して投機為替がドルを売ったからだ。ここで為替の需給が変わる。そして為替レートに影響を与える。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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