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市場養生訓

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第869回

2021年07月13日

 OPECでサウジアラビアとUAEの対立が強まり、原油価格の動向に影響を与えている。少し前まではサウジアラビアはUAEなど湾岸諸国と共にカタールを敵対視し外交関係を断絶していた。
 これらの湾岸諸国はGCC(湾岸協力評議会)のメンバーだ。湾岸6か国(上記3か国の他にクウェート、オマーン、バーレーン)があらゆる分野での調整、統合、連携を目的として1981年に設立された。
 GCCが市場で話題になったのは通貨統合のプランを発表した時だ。ユーロ誕生の熱気が強く残る中でのアラブ統一通貨構想だ。GCC諸国は原油輸出国であり、ドル建ての収入が大半で、ドルにペッグした固定相場制を採っていた。言語をはじめ多くの共通点があり統一通貨の実現へのハードルもそれほど高くないと期待された。だがプランは進展しなかった。そのうちクウェートがドルペッグ制からユーロなどを含めた通貨バスケット制に変えたことで実現は完全に遠ざかった。
 通貨統合は難しい作業が続く。政治経済システムの均質性を追求するため緻密なプランに妥協とリーダーシップ、それに時間、どれを欠いても実現は難しくなる。それはユーロへの統合過程が語っている。日本でも民主党政権時代にアジア統一通貨構想が表面化したことがあったが、これは単なる話だけに終わった。
 それほど困難な作業を経て誕生したユーロはそれ自体で強靭さが備わっている。誕生後もユーロ債務危機などでユーロ解体が叫ばれた時もあったが、乗り越えてきた。ユーロは11か国の共通通貨として誕生したが、その後拡大して現在は19か国の共通通貨だ。(その他にEU以外でユーロを自国通貨として採用している国もある)
 債務危機やポピュリスト政党の台頭などでユーロ圏拡大の勢いは当初に比べて弱まっているが、EU諸国の中でユーロ導入に対する国民世論が高い国(ルーマニア、ハンガリーなど)もある。その点では拡大のポテンシャルは十分ある。
 ユーロの強靭さが増す契機になるのはEUの共通債の発行だ。昨年決定したEU発行の債券は従来よりも規模がはるかに大きく、米国債が圧倒してきた債券市場に風穴を開けるものだ。格付けも2社が最高格付け、1社はそれに準じる。
 ユーロは現在世界の外貨準備の中で約60%のドルに次いで約20%のシェエアを占めているが、EU共通債の発行が増加するに従い市場が拡大し、外貨準備に占める割合も増加する可能性が高い。この場合ドルからのシフトになると思われる。
 ロシアの外貨準備では既にユーロの割合が最も多く、ドルを上回っている。ロシアは経済制裁もあり、ドル基軸体制からの脱却を政策として進めている。もっともこれは例外的なケースだ。米国との関係が悪化している中国は同様にドル一極体制の現行の国際通貨システムを是としないことを明言して、人民元の国際通貨化の促進に力を注いでいる。だが依然としてドルとの差は大きい。世界の外貨準備での人民元の割合は着実に増加しているがまだ3%にも満たない。3兆ドルを超える世界一の外貨準備を保有する中国も5,6割はドルで保有すると見られる。
 中国が本当にドル一極体制を終わらせることを優先するならユーロに振り向けるのが現実的だ。外貨準備のポートフォリオを決める際には安全性、流動性、収益性が考慮される。その点では米国債市場が圧倒してきた。だがEU共通債市場が拡大すれば米国債の相対的優位性は低下する。
 中国がドルとユーロは半々ぐらいにするならば、中国はロシアのように急に増減させるようなことはしないで徐々に進めるだろうが、その影響は大きい。
アジア諸国にも追随する国が出るからだ。そのケースではユーロドルが1.80から2.0になっても驚かない。
 

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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