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第760回 米雇用者数は予想を下回るも、ドルの底堅さに変わりはない

2021年06月07日

 前回更新分の本欄で、ドル/円について「上値トライの勢いが削がれれば、一旦は(一目均衡表の)日足の基準線が位置する水準まで調整する可能性もある」と述べたが、実際に先週末4日のドル/円は一時109.36円まで急落し、結果的に日足の基準線が位置する水準(109.33円)で下げ止まる格好となった。

 急落の主因は、発表された5月の米雇用統計における非農業部門雇用者数(NFP)の伸び(55.9万人増)が事前の市場予想(67.5万人増)を下回ったことと見ていいだろう。前日3日に発表された5月のADP雇用統計や新規失業保険申請件数が、なまじ強めの結果であったことに加え、「前月比」の数値であるだけに前回4月の弱めの結果(上方修正後27.8万人増)に対する反動が強めに出てもおかしくないと見られたことなどが、事前予想を少々引き上げていた可能性は高い。
 とはいえ、いまだに「手厚すぎる失業保険の上乗せ給付」が続けられていることや育児の問題などによって、求職活動の開始を見送っている向きが少なくないこともよく知られたところである。よって、今回の55.9万人は十分に評価できる前向きな結果であり、決して悲観視するようなものでないことは確かであろう。
 ただ、発表前に「今回の結果次第では、来週に控えた米連邦公開市場委員会(FOMC)において早期出口戦略に向けたヒントが示される可能性もある」との見方からドルショートに傾けることを躊躇うムードがあったところも事実。結果、ドル/円は一時110.32円まで値を上げる場面もあったことから、発表後はわかりやすく売りに押された。

 いずれにせよ、事前予想との差は「たかが11.6万人」である。コロナ禍からの脱出過程という複雑な状況を考えれば、予想が多少なり外れるのは当たり前であり、言うなれば“誤差の範囲”と見ることもできる。それで、すべての前提が覆るわけもなく、ゆえにドル/円の底堅さは今しばらく変わりがないと思われる。
 先に述べたとおり、目下のドル/円は日足の基準線が下値サポートとして意識されやすいうえ、その少し下方には21日移動平均線(21日線)のサポートもある。よって、目先はこれらの節目が下値を支持し続けるかどうかをまず見定めたい。むろん、FOMCを控えてしばらくは方向感が見出しにくい状態を続ける可能性もあると思われるが、少し長い目で見れば再び3月高値=110.97円処を試す動きとなっておかしくないと考える。

 一方、ユーロ/ドルは米雇用統計の結果を受けて急激に値を戻す展開となった。とはいえ、その戻りは「先週3日の急落分を取り戻した程度のもの」とも言え、いまだ「5月18日以降に形成した転換保ちあいを一旦下放れた」との印象は残る。
 今週10日にはECB理事会が控えており、市場では「大幅な政策転換を示すことはまずない」との見方が大勢を占める。ラガルド総裁はじめECBメンバーらは、なおもハト派姿勢を堅持すると考えられ、当面は21日線が上値抵抗として意識されやすいと見る。
 前回更新分の本欄では、ユーロ/ドルについて「1.2150ドル処を軸とした1.2050-1.2250ドルのレンジ内での値動きに終始する」と述べたが、実際、先週1日に一時1.2254ドルまで上値を伸ばしてからは反落し、2日には1.2164ドルまで下押し。そこから一旦反発したものの、3日に1.2150ドル処を下抜けてからは1.2104ドル処まで一気に下押す動きが見られた。よって、今週も「1.2150ドル処を軸とした1.2050-1.2250ドルのレンジ内での値動きに終始する」との見方を替えずに向き合いたいと考える。
 このところ、英国やユーロ圏ではワクチン接種の拡大に伴う経済再開の動きからインフレ期待が高まっているが、結果的にポンドやユーロが高くなったことで、そのこと自体が域内の物価上昇を抑える方に作用するということも心得ておく必要はあろう。
(06月07日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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