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第770回 「結局はワクチン」が今の現実…

2021年08月23日

 前回更新分の本欄で、当面のユーロ/ドルの行方について「当面のリバウンドに限界が感じられるようであれば、再び反落して1.1700ドル近辺まで下値を試しに行く可能性も十分にある」と述べた。そして案の定、ユーロ/ドルは先週18日以降に1.1700ドル割れの水準を試す動きとなり、19日には一時1.1666ドルまで下押す場面もあった。
 結果的として、ユーロ/ドルは21日移動平均線に上値を押さえられる格好となり、今年3月安値=1.1704ドルをも下抜けた。むろん、米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の政策方針の足元の違いを考えれば、対ドルでユーロの上値が押さえられがちとなるのは当然のことと言える。むしろ、目下のユーロはキャリー取引における調達通貨として便利に利用されてしまっている感さえある。また、原油価格が下落傾向を続けていることに連動して、ポンド/ドルが軟調に推移し続けていることもユーロ/ドルの上値を重くしているものと考えられる。

 もちろん、目下は何より今週26-28日にジャクソンホールで開かれるカンザスシティ連銀主催の年次シンポジウムの結果を待ちたいというムードが色濃い。
 新型コロナウイルスのデルタ変異株が猛威を振るうなか、経済活動の正常化見通しが不透明となっていることは事実ながら、FRBによる資産購入措置を現行のまま継続することには相当な違和感があることもまた事実で、いわゆるテーパリングの開始時期と開始後の縮小ペースについて市場が関心を強めるのも当然と言えば当然である。
 むろん、デルタ変異株の感染拡大にまったく歯止めがかからない状態が今後も長らく続くというのであれば、テーパリング開始の議論は先延ばしとなろう。ただ、ここにきて米政府や米主要企業などが感染拡大防止のための具体的措置の実施に動き始めていることも見逃してはならない。
 既知のとおり、バイデン米政権は先週18日、デルタ変異株の感染拡大を食い止めるため3回目の追加接種(ブースター接種)を9月下旬から始めると発表した。また、それ以前に米国防総省は、米兵に対して新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づける手続きを9月中旬までに行うと発表(8月9日)している。
 米企業のなかでも、オフィス出社の条件にワクチン接種やマスクの着用を課すところが増えてきているうえ、新たな採用条件にワクチン接種を掲げる企業も急増している。これまで「超売り手市場」の状態が続いた米雇用市場も、9月になれば失業保険給付の上乗せ措置終了や新学期到来に伴う学校の授業再開などによって、求職活動を再開する向きが一気に増え、企業側が新規採用に一定条件を課すことも可能になると見られる。
 
 こうした諸々のワクチン普及促進策が奏功すれば、いずれ経済活動の正常化見通しに関わる不透明感も後退し、FRBが金融政策の正常化を急ぐ可能性もあると見られる。「結局はワクチン」ということになるわけだが、それが今の現実でもある。
 その意味からしても、今足元でドルを無闇に売り込むということは些か躊躇われるところとなる。繰り返すも、目先は今週のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演内容次第ということになるが、中期的には円やユーロに対してドルが強含みで推移しやすくなるといった流れが続くと見ておきたい。
 そのうえで、まずドル/円については109円台前半での押し目買い姿勢を継続したいと考える。今しばらく方向感に乏しい展開が続くと見られるが、きっかけ一つで再び110円台後半の水準を取り戻す展開となる可能性も十分にあると思われる。
 一方、ユーロ/ドルについてはなおも戻り売り姿勢で臨むことを基本とし、少し長い目で昨年11月安値=1.1603ドル処を試す展開になると見ておきたい。なお、当面は足元で下落基調が続く原油価格に注目し、値ごろ感から買い戻される局面が到来した場合は、短期でポンド/ドルを買い拾うことも念頭に置いておきたい。
(08月23日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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