先週末3日に発表された5月の米雇用統計の結果に対して、市場は「依然として米労働市場は非常にタイト」と受け止めた模様。なおも米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを行うとの見立てから米国株が売られ、ドルが買い戻された。
確かに、非農業部門雇用数(NFP)の伸びは市場予想を上回ったが、前月実績は下回っており、個人的には「強いとも弱いとも言えない」という印象を抱いた。
平均時給の伸び(前年同月比)は前月よりも鈍化していたし、より詳しく見れば「小売」の分野で雇用者数が目立って減少していた。「建設」分野の雇用は増加したが、足元では米住宅需要が目に見えて減速しはじめており、ほどなく関連の雇用も減少に転じるものと想定される。
すでにFRBは6月と7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で其々0.5%ポイントの利上げ実施を決定する可能性が高いことをアナウンスしており、その影響が各方面に及ぶことを考慮する必要もあるものと思われてならない。一部の米企業経営者や市場関係者からは米労働市場の先行きに対して、やや悲観的な声が聞かれ始めてもいる。
5月31日にバイデン米大統領がFRBのパウエル議長と会談した。「バイデン氏はFRBの独立性を尊重することを確約した」と伝わるが、そんな当たり前の事柄を「今さらあえて強調する」のはなぜか。中間選挙を控える米大統領にしてみれば「政権の支持率をアップさせるべく、敢然とインフレに立ち向かう姿勢を最大のアピールポイントとするポピュリズムにいましばらくFRBも付き合ってほしい。その独立性を“尊重”はするけれども、いまは全面的に協調してもらいたい」ということなのではないか。
先週2日にはFRBのブレイナード副議長が米経済専門チャンネルCNBCとのインタビューで「9月に利上げを休止する可能性は非常に低い」との考えを示したことが話題になった。なぜ、現時点で9月の事柄に言及しなければならないのか理解しがたい。
とまれ、ドル/円は再び130円台に乗せる展開となっている。そのこと自体に驚きはなく、何よりクロス円全体の見事な上昇ぶりには目を見張る。
先週末まで、ユーロ/円とポンド/円は7日続伸となっており、とにかく円の弱さが際立っている。日銀が従来からの政策方針を堅持し、足元で実質金利が見る見る低下していることを考えれば無理もない。ユーロは5月半ば以降、欧州中央銀行(ECB)の7月利上げ見通しが強まっていることから対円で強含みとなるのも道理と言える。ポンドも今月16日の金融政策委員会(MPC)で追加利上げ実施の決定を下すと見られており、対円での上昇が続くことに違和感はない。
ただ、ユーロ/ドルやポンド/ドルに対しては弱気と見る市場関係者も少なくない。
ことにポンドについては、すでに英中銀の利上げ期待を市場が過度に織り込んでいるものと見られ、むしろ引き締めによってリセッションに陥るリスクの方が警戒されはじめている。今月のMPCにおける決定が0.25%ポイントの通常利上げに留まれば、市場の失望は避けられないと見る向きもある。
また、ユーロ/ドルについても依然として一段の下落を見込む向きが少なくないとの声が聞かれる。やはり、欧州連合(EU)のロシアに対する段階的な石油禁輸措置が域内経済の成長を鈍らせるとの懸念を払しょくすることはなかなか難しい。
今週は、やはり10日に発表される5月の米消費者物価指数(CPI)の結果に対する市場の反応が最大の焦点となりそうである。それ以前にドル/円が131円台を試す可能性もあるが、5月9日高値=131.35円を明確に上抜けるのはそう容易ではないと見る。むしろ、インフレのピークアウト感が強まれば、あらためて129円台前半あたりまで下押す可能性もあると見る。
(06月06日 07:00)
最新の記事
第807回 FRBの独立性を“尊重”はする米大統領
2022年06月06日
2024年03月18日 | 第889回 新たに公表されるドット・プロットが気になる… |
2024年03月11日 | 第888回 日・米株価に一時調整入りの可能性… |
2024年03月04日 | 第887回 「4万円」トライと日銀「ギアシフト」 |
2024年02月26日 | 第886回 当面の行方は「株価次第」 |
2024年02月19日 | 第885回 注目はエヌビディア決算発表後の株価!? |
プロフィール
-
田嶋 智太郎(たじまともたろう)
昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。
FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意
【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。
【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。
【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。
【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。
取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。
〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会