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第807回 FRBの独立性を“尊重”はする米大統領

2022年06月06日

 先週末3日に発表された5月の米雇用統計の結果に対して、市場は「依然として米労働市場は非常にタイト」と受け止めた模様。なおも米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを行うとの見立てから米国株が売られ、ドルが買い戻された。
 確かに、非農業部門雇用数(NFP)の伸びは市場予想を上回ったが、前月実績は下回っており、個人的には「強いとも弱いとも言えない」という印象を抱いた。
 平均時給の伸び(前年同月比)は前月よりも鈍化していたし、より詳しく見れば「小売」の分野で雇用者数が目立って減少していた。「建設」分野の雇用は増加したが、足元では米住宅需要が目に見えて減速しはじめており、ほどなく関連の雇用も減少に転じるものと想定される。
 すでにFRBは6月と7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で其々0.5%ポイントの利上げ実施を決定する可能性が高いことをアナウンスしており、その影響が各方面に及ぶことを考慮する必要もあるものと思われてならない。一部の米企業経営者や市場関係者からは米労働市場の先行きに対して、やや悲観的な声が聞かれ始めてもいる。

 5月31日にバイデン米大統領がFRBのパウエル議長と会談した。「バイデン氏はFRBの独立性を尊重することを確約した」と伝わるが、そんな当たり前の事柄を「今さらあえて強調する」のはなぜか。中間選挙を控える米大統領にしてみれば「政権の支持率をアップさせるべく、敢然とインフレに立ち向かう姿勢を最大のアピールポイントとするポピュリズムにいましばらくFRBも付き合ってほしい。その独立性を“尊重”はするけれども、いまは全面的に協調してもらいたい」ということなのではないか。
 先週2日にはFRBのブレイナード副議長が米経済専門チャンネルCNBCとのインタビューで「9月に利上げを休止する可能性は非常に低い」との考えを示したことが話題になった。なぜ、現時点で9月の事柄に言及しなければならないのか理解しがたい。

 とまれ、ドル/円は再び130円台に乗せる展開となっている。そのこと自体に驚きはなく、何よりクロス円全体の見事な上昇ぶりには目を見張る。
 先週末まで、ユーロ/円とポンド/円は7日続伸となっており、とにかく円の弱さが際立っている。日銀が従来からの政策方針を堅持し、足元で実質金利が見る見る低下していることを考えれば無理もない。ユーロは5月半ば以降、欧州中央銀行(ECB)の7月利上げ見通しが強まっていることから対円で強含みとなるのも道理と言える。ポンドも今月16日の金融政策委員会(MPC)で追加利上げ実施の決定を下すと見られており、対円での上昇が続くことに違和感はない。
 ただ、ユーロ/ドルやポンド/ドルに対しては弱気と見る市場関係者も少なくない。
 ことにポンドについては、すでに英中銀の利上げ期待を市場が過度に織り込んでいるものと見られ、むしろ引き締めによってリセッションに陥るリスクの方が警戒されはじめている。今月のMPCにおける決定が0.25%ポイントの通常利上げに留まれば、市場の失望は避けられないと見る向きもある。
 また、ユーロ/ドルについても依然として一段の下落を見込む向きが少なくないとの声が聞かれる。やはり、欧州連合(EU)のロシアに対する段階的な石油禁輸措置が域内経済の成長を鈍らせるとの懸念を払しょくすることはなかなか難しい。

 今週は、やはり10日に発表される5月の米消費者物価指数(CPI)の結果に対する市場の反応が最大の焦点となりそうである。それ以前にドル/円が131円台を試す可能性もあるが、5月9日高値=131.35円を明確に上抜けるのはそう容易ではないと見る。むしろ、インフレのピークアウト感が強まれば、あらためて129円台前半あたりまで下押す可能性もあると見る。

(06月06日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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