『為替大観』の配信は、年内は本日が最後となります。 今年一年、ありがとうございました。 新年はややイレギューラーになりますが1月4日(木)を予定しておりますので、来年もよろしくお願いいたします。
2023年も今週で終了。恒例になるが、最初に1年の振り返りから始めたい。昨年最終号における相場見通しとその実績(12/27午後4時現在)は下記の通りである。
見通し 実績(12/27 午後5時現在)
ドル円 120.00 - 140.00 127.21 - 151.91
(年末122.00円) (142.78円)
ユーロドル 1.0000 – 1.2000 1.0448 - 1.1276 (1.1041)
ポンドドル 1.0500 – 1.3500 1.1790 - 1.3142 (1.2726)
ドルインデックス 90 – 110 99.578 – 107.348(101.513)
ドル円が、ここまで円安が進むとは想定していなかったことで、レンジは大きく円安に外れ、年末見通しは逆となった。シナリオとしては、「年前半にドル高のピークを付け、後半になればインフレも落ち着き、米金利は低下、米景気も高金利の影響でリセッション(景気後退)は避けられず、FRBは利下げに転換する」と想定した。
一方で日本は、世界には遅れるが物価上昇は確実に起こり、日銀も少なくとも年半ばから後半にかけてマイナス金利を撤廃、日本の金利も徐々に上昇すると予想、結果として日米金利差が縮小、円高に転換すると予想した。
米国サイドでも、ドル安となる要因が出ていることに注目した。それは主に政治の不安定化に起因する。2022年の米中間選挙の結果、議会でネジレ(上院は民主党、下院は共和党)が発生、議会運営が不安定になることが懸念されたことや、世界の分断化の進展でドル離れの動きにも注意が高まってくる点であった。
しかし、振り返ると、このシナリオは残念ながら2023年には実現しなかった。結果として、ドル円変動要因となる日米金利差が高止まり、キャリートレード(円売りドル買い)の拡大で、円安が進展。円安値は151.91円と昨年の安値151.94円とダブルトップを形成することとなった。
加えて日銀の政策変更が2023年には全く行われなかったことも円安を助長した。徐々に10年債金利の目標水準を引き上げるなどYCCの弾力化を図ったが、基本となるマイナス金利の撤廃には踏み込まなかったことで、政策決定会合毎に、世界で失望感が広がった。
このような環境で2024年を展望すると、端的に言えば「2023年のシナリオが1年遅れで実現する」という予想である。米国のドル下落予想と日本の円高要因の両方が同時に起こるという見通しである。主人公は日米中央銀行、助演はアメリカ消費者。GDPで7割近いシェアーがある個人がどのような行動を起こすかが、米国の安定を左右する。しかも2024年は米国大統領選挙がある。「もしトラ」という言葉が既に世界に飛びかっているが、2024年3月のスーパーチューズデー以降、流れが一気に進展するかもしれない。やはり世界の目はアメリカに注がれる。
あえて昨年末に掲げた課題(相場の方向性を決めるポイント)を再掲する。但し問題意識は昨年と同じだが、よりゴールに近づいているとの感覚で市場を見ていきたい。
“①世界的な物価動向、②米国の景気後退(リセッション)の期間と深度、③中央銀行の政策(米FRB、欧州ECBの利上げ最終点と利下げ開始時。日BOJの引き締めへの転換時期)、④米国議会のネジレによるバイデン政権への影響度(信認低下で米国からの資本流出あるか)、⑤円安要因となっている日本の国力低下からの脱却(金融政策の修正、貿易赤字の削減、財政健全化への改善等)の有無、⑥世界覇権の分断、先鋭化により引き起こされるドル離れ(通貨別外貨準備動向、金相場動向)に変化の兆しがでるか、である”。
そこで、2024年の年間相場予想は以下の通りとする。
ドル円は128.00-148.00円、年末133円(昨年予想120.00-140.00円)、ユーロドルは1.0200-1.2200(昨年予想1.0000-1.2000)。英ポンドドル1.1500-1.3500(昨年予想1.0500-1.3500)、またドルインデックスは、85.00-105.00(昨年予想90.00-110.00)と予想する。
今年1年、ご愛読いただきありがとうございました。
新年は1月4日から再開いたします。引き続きよろしくお願いいたします。
(2023/12/27、 小池正一郎)