「金利差が相場を決める」、改めて説明することも必要ないほど「相場変動の根本」として今では当たり前の言葉になっているが、先週はまさにその真髄を見せつけられたような相場展開となった。
まず、先週のドル円の値動きを追っていきたい。1月2日オセアニア市場で140.80円で幕を開けた。そこからドルの上昇が始まり、日足では3連騰。ここまでのドル高は、日本要因と米国要因の合わせ技。一つは、日本の能登半島地震。被害は甚大、復興のために日銀は緩和政策終了を先延ばししなければならないだろうとの思惑が働いたこと。すなわち金利差は縮まらない(=円売り)。
もう一つは最初の米国主要経済指標・ISM製造業景況感指数が、予想より高い改善傾向を示した(47.4と3か月ぶりに上昇した)ことである(=景気底堅い=FRBはすぐ利下げする理由がなくなる=ドル買い)。その後、4日目の5日、米雇用統計が発表され(NY時間午前8時30分)、現地からは“強い(Strong Report)!”と伝わってきており、ドルは続伸、発表間もなく145.98円となり、146円超え目前となった。(ここまでがドル高ステージ)。
しかし次いで発表(NY時間午前10時)になったのが、もう一つのISM景気指標、非製造業(サービス部門)景況感指数であった。予想を大きく下回る結果(予想52.7に対し、実績は50.6)に市場の空気は一変。金利安、ドル安、株高に転換し、ドル安ステージが始まった。ドル円は5分間で90銭も急落、その後も下落し、143.81銭の安値を付けた。短時間で2円も円高になる乱高下の様相となった。
他の市場も、債券市場(10年債)ではISM発表前の4.10%から3.95%に急低下、株式市場でも、ダウ平均株価が強い雇用統計を受けて37,430ドル辺りまで下がった後、一時は37,690まで上昇するほどの荒い動き。この変動要因は、米ドル金利の変動タイミングに置き換えるとわかりやすい。多くのディーラーは一方の目でドル金利の値動きを追いながら、他の市場でも売買していることが想定できる。
さて、この市場環境の中、あす11日は雇用統計に次ぐ重要指標である米消費者物価が発表になる。市場予想は下記のとおりである。
<前月比> <前年比>
予想(前月実績) 予想(前月実績)
総合 +0.3% (+0.1%) +3.2%(+3.1%)
コア +0.3% (+0.3%) +3.8%(+4.0%)
FRBのパウエル議長は、住宅関係のサービス価格を中心としてコア指数を重視している。一方で、総合指数で10月は前月比変更なし、となって物価上昇も落ち着いたかに見えたが、11月は+0.1%の上昇、今回12月分が予想通りの+0.3%(コアも同じ+0.3%予想)となれば、インフレ懸念が再燃しかねない。その場合は金利上昇、ドル高146円台も可能性がある。コアと共に、単月の動向だけでなく、毎月の推移を把握していくことも指標を見る上で重要である。
さて、今後1週間の相場予想だが、CPIの結果次第であるが、インフレ懸念再燃と考えてドル円は143-146円と予想。ユーロドルはユーロ金利の低下が落ち着き、1.0800-1.1050と前週と変わらず。また対円では156.50-159.50円とユーロ高を予想。そして英ポンドドルは1.2550-1.2850と先週と同水準の予想とする。
(2024/1/10、 小池正一郎)