先週末にかけて、市場では次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策は据え置かれるとの見方が一段と優勢になった。目下の市場は80%以上の確率で据え置きと見ている。
一つに大きかったのは、28日に発表された4-6月期米国内総生産(GDP)確定値において個人消費の伸びが予想を大きく下回ったこと。また29日に発表された8月のPCEデフレータが、2020年後半以降で最も緩やかなペースの上昇に留まったことも見逃せない。
米個人消費の急速な伸びの鈍化は、ガソリンなどのエネルギー価格が上昇していることに加えて、コロナ禍で積み上がった「過剰貯蓄」が解消されて家計に余裕がなくなってきていること、さらに全米で4000万人超に上るとされる学生ローン利用者の返済が再開されることも消費マインド低下の要因としては大きいと考えられる。
もちろん、全米自動車労組(UAW)のストライキが長期化することによる米国経済への悪影響も懸念されるうえ、米国の政府機関が一時閉鎖される可能性が取りざたされていたことも、市場における米利上げ確率を低下させていた。
そんななか、先週の米10年債利回りは一時4.68%台まで急上昇。その一因となったのは、米会計年度末にあたる局面で米財政を巡る与野党の対立が激化し、それを機に米財政運営への懸念が市場で急速に強まったことである。
先週25日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが「米政府機関閉鎖の場合には米国債の信用に影響が及びかねない」との見方を示し、結果、米長期債の期間プレミアム(債券を長期に保有するリスクに応じた上乗せ金利)が一気に高まって、米10年債利回りを07年8月以来の水準にまで押し上げることに一役買った。
もっとも9月のFOMCを通過して以来、米10年債利回りがその水準を切り上げ続けていることも事実。いわゆる「higher for longer」の基本姿勢がFOMCで確認されたことによるものだが、それによって米2年債と米10年債との利回り格差=逆イールドが急速に縮小し続けていることも見逃せない。つまるところ「以前の2年債売り・10年債買いのポジションが、いま足元で一気に巻き戻されている」ということで、そうした状況はいつまでも続かない。また米政府機関の閉鎖が最終的に回避されたことで、米財政運営への懸念も後退し、足元で米10年債利回りの上昇は一旦ピークアウトしてもおかしくない。
ここもとは米インフレの鎮静化と米景気の成長鈍化が着実に進んでおり、すでに今年の米年末商戦について慎重な見通しが増えている。UAWによるストライキの波紋は広がるばかりで、仮に大幅な賃上げが実現したとしても、その先には米自動車産業の弱体化という現実が待ち構えている。つまり、結果的には労働者にも不利益となる可能性が高い。
数々の“試練”に直面している米国のドルは、目下のところ金利上昇を理由に高止まりしているが、いずれは目の前の現実を織り込んでいく局面を迎えよう。よって、今後もドルがひたすらに一段の上値を追い続けるとは考えにくい。
目下のところ、ドル/円については150円処の上値抵抗、ユーロ/ドルについては1.05ドル処の下値支持が機能していると考えられ、ひとまずはそれらの節目がもう一段のドル高に歯止めをかけるかどうかを見定めることが必要である。
もちろん、ドル高に歯止めがかかったとしても、円安が止まらなければドル/円、クロス円の上値リスクは低下しない。その点については今後の日銀の出方次第ということになるが、ここにきて市場で政策修正への警戒が再び強まっていることを考えると、円の下値にも自ずと限界はあると見られる。
そうしたことも勘案して、今週のドル/円はひとまず21日移動平均線(21日線)が位置する148円割れの水準を試す動きになると見る。またユーロ/ドルについては21日線が位置する1.0660-70ドル処まで値を戻すと見ておきたい。
(10/02 07:00)
FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-