12月は、中央銀行ウイークが再来する。今年最後のイベントは政策金利の天井圏の確認、と言うより、利下げ開始の号砲になるのではないだろうか。2024年の年間見通しは12月最終号に掲載予定だが、今回はそのプレビューとして、現在の市場の空気をよんでみたい。
歴史的には、為替相場決定要因として経常(貿易)収支説、金利説、心理説などがあるが、これらは主に需給で整理される。単純に言えば、理由はともかく買いたい人が多ければその通貨は上昇し、売りたい人が多い場合は下落する。売買主体により、実需と投機があるが、その実態を積み上げていけば相場見通しが出来上がる。筆者の考え方は、心理説に近いと言え、活用ポイントを説明したい。
重要な点は、常に現状分析を行うことだ。現在の相場が今日までどのように出来上がったかを知ることである。つまり目的を明確にすることだが、筆者の判断基準は、「相場は若いか、古いか?」の区分である。若いとは、今出来上がっている相場は最近浮上した要因で新たに動いているかであり、また古いとは、長い間同じ要因で相場が動いている結果、ここに辿り着いているか、である。
現在の為替市場でいえば、どの通貨もかなり古い相場であると言える。具体的には新型コロナショック解決のために行った大幅金融緩和から引き締めに転じた時がスタートであり、既に2年近く経過していることだ。すなわち金利差を要因とした為替変動は、終盤にさしかかっているとの見方である。政策金利は既に5%、多くの銀行が5%以上で据え置きを続けている。登山でいえば9合目に達し、場合によっては頂上に辿り着いている可能性がある。
例えば、ニュージーランド(NZ)中銀が引き締め(利上げ)に転じたのが2021年10月(2020年3月16日から続けていた0.25%を1年7カ月ぶりに引き上げ0.50%と設定)であり、その後これまでたびたび、他国の利上げに先行してきた。現在は、今年5月に5.5%に引き上げて以来、最近(11月29日)まで4回連続据え置きを続けている。今週は豪州中銀も前回の利上げから一転して4.35%に据え置きを決定、今日は2回連続して据え置きを続けているカナダ中銀の決定がある。主要国ではないものの、機動的な変更ができる中央銀行として、他国の先行指標になる可能性があると注目している。
そして、米国経済動向も重要な追跡項目だ。第3四半期GDPが+5.2%(前期比年率)とコロナショック以降最大の成長を示しているが、この数字はバックミラーで見ているようなもの、個別項目では、第4四半期に入り景気後退の指標が増加している。今まで強いと言われた雇用市場も緩和傾向が顕著になってきた。昨日発表になった10月米求人件数は、873.3万人と前月の935万人から減少、市場予想をも下回り、2021年3月以来の低水準となった。労働市場の緩和、落ち込みが浮上してきた。
今週金曜日8日には、重要指標の一つ雇用統計が発表になる。ヘッドラインの一つである非農業部門雇用者数の市場予想は+19万人と前月(+15万人)より増加が見込まれているが、来週のFOMC(12/12-13)を前にして、12日のCPIと合わせて極めて重要なデータとなり、FRBの決定に大きな判断材料になるので、例月以上に市場へ与える影響、ボラテリティは大きくなると警戒している。
さて、そこで相場予想だが、ドル円は145.50-148.50円とドル安を予想、ユーロドルはECBの利下げバイアスを先取りしてユーロは軟調に推移するとみて1.0650-1.0950、対円は157.00-160.00円と先週より大幅な円高を予想、そして英ポンドドルは1.2450-1.2750とポンドの小幅安を予想する。
(2023/12/6、 小池正一郎)