日本は果たしてリスクオフ国なのか? 昨日12/3夜22時過ぎまではドル円は149.80円近辺で小刻みな上下動を繰り返していた。しかし22時20分過ぎから、明確に下落(円が上昇)を始めた。急騰ではなく、時間が経つごとにドルの下げ幅を広げていったという動きであった。日本の夜22時過ぎは米国ではまだ朝8時過ぎ、米ドル金利の低下が進んできたのか、とも推測したが、時間的には債券市場の本格オープン前である。
何かあるかな? と思った矢先、飛び込んできたのが、韓国大統領の非常事態宣言のニュース、「オー!」と思わず声を上げた。一斉に報じられたことから、久しぶりに見る「ブラックスワン」かもしれないと身構えた。しかし23時半すぎに148.64円を底に、ドル円相場は戻り始めた。まずは一息ついた。その後神経質な展開を経て、昨日のNY終値は149.60円、そして東京市場では150円台までドルは回復、現在(12/4午後19時20分)は150.75円近辺で取引されている。
この流れの中で、円高理由として「日本はリスク回避国」との解説がみられた。隣国で発生した非常事態であり、日米韓の密接な連携があることから、政治経済社会的に影響は大きいと懸念されていることを考え、日本はむしろリスク当事国だとすれば、決して「円が安全通貨」とは思えないはず。この見方が広がったことで、とりあえず円高の勢いは止まり、逆に円売りに転換したものと判断される。この一連の状態は、筆者がいう、交通渋滞のうちの事故渋滞に相当する。この状態に遭遇した時のリスク回避策は「事故に巻き込まれるな。一刻も早くその場を離れろ」である。
本日未明には6時間余りで宣言は取り消され、一気に問題が拡大していくことへの懸念は後退したが、その後の報道を見ると、ご承知の通り問題が決して解決したとは思えない。政治の混乱は増していくことが心配される。とすれば、リスク回避のためには円は売られる方向になるとの見方が優勢になるのではなかろうか。
今回の韓国の事件は、世界的には極東の一か国の国内問題、世界のGDPでみるとわずか1.74%のシェア(2023年、IMF調)、ただ順位としては世界12位の位置にある。ちなみに1位は米国でシェア26.28%、日本は4位シェア4.00%(同)である。日本も決して対岸の火事としてはならないだろう。今後の進展を注意深く見ていきたい。
ところで、この韓国の事件の前、11月30日に、今後為替市場に影響を与えかねないことが明らかになった。トランプ次期大統領の発言であった。筆者としては、「これは無視できない。明らかに潜在的なドル高要因だ」と、2025年の重点項目に書き加えた。それは、トランプ氏自身のSNSに投稿したものだが、「ブリックス(BRICS)諸国が、米ドルに対抗する新たな通貨を創設した場合、100%の関税をかける」との発言である。誰もが、「ディール(取引)を優勢に進めるためのトランプ流の脅しの一つだ」と大きな問題としていないようだが、果たしてそれで良いのであろうか?
確かにドルの存在意義の低下があるのは確かである。その一つが、IMFが3ヶ月ごとに発表している、世界の外貨準備の通貨別シェア(COFER)で米ドルが低下していることである。最新のデータ(2024年6月末、2024年9月27日発表)によれば、米ドルは58.22%と過去最低を更新した。2022年9月末に60.10%を示して以来60%を超えることがなく、徐々に低下しているのが現状だ。ただ、2位がユーロの19.76%と大きく差があり、米ドルの圧倒的な優位性は揺るがない。
ちなみに、円は3位の5.59%、次いで英ポンドの4.94%、人民元は7位で2.14%(2022年6月シェア2.63%)である。一方増加している通貨は、シェアは小さいがカナダドル(5位)、英ポンド(6位)で、2022年9月末との比較で、2024年6月末はそれぞれ、2.45%→2.68%、1.91%→2.24%である。ただ、決済で使われている通貨比率では人民元は大きく拡大しているとみられるので、トランプ氏はこちらの数字を対象にしている可能性がある。今後為替に関する発言については、時に応じて出てくることがあるのでしっかりフォローしていきたい。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、今週発表の雇用統計では、雇用者数が大きく増加するとの予想(先月+1.2万人に対し、+20.0万人の予想)があり、今後はドル買い戻しが優勢になると考え、149.80-153.00円と150円台が定着すると予想する。一方欧州通貨は、フランスの政治的な混乱に対する懸念とECBの利下げ予想を背景にユーロ軟調と考え、今週は対ドルで1.0350-1.0600とユーロ軟調を予想、また対円では157.00-160.00と下げ止まりと予想する。英ポンドドルは、1.2550-1.2750とポンドの底堅い展開を予想する。
(2024/12/4 小池正一郎)
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