二つの米国重要データを無事に終えて、今日のFOMCを迎える。予想は、政策金利は5.25-5.50%と変更なし、だ。そして今回一番の注目ポイントは、ドットチャートである。市場はパウエル議長からのメッセージとして、「HigherからLonger(より高くからより長く)」と受け取り、現在の金利は続くと受け取っており、今後の利下げタイミングを探る動きを強めている。
市場では据え置きを前提として取引されているが、会合後の記者会見でパウエル議長の発言がハト派(利下げにバイアスで円高)か、タカ派(利上げもあり得ると示唆があると円安)かによって、その後の展開が違ってくる。この判断に大きな影響を与えるのが、ドットチャートである。
これはFOMCのメンバーが今後3年間と長期的な適正水準の見通しを一人一人示す図表のことで、3ヶ月ごとに発表になる。前回9月の見通しは、2023年末は5.50-5.75%(現行より0.25%高い見通し)で、2024年は2回(0.25% x 2)引き下げ、年末の水準は5.00-5.25%となっている。9月の発表時の政策金利は5.25-5.50%だったが、それ以後2回据え置きが続いており、2024年の見通しが焦点になる。現行水準は5.25-5.50%のままであり、ここから2024年は何回利下げが想定されるかが、今回のドットチャートで明らかになる。
ちなみに、先物市場から利下げ時期を見ると、消費者物価の発表以後、市場予想にわずかに変化がある、現在の予想は3月まで現行水準、5月、6月、9月、12月と計4回の利下げで、2024年末は4.25-4.50%となっている。
ところで、最近のドル円市場動向に目を転じると、市場参加者が低下する12月と言う季節的要因も大きいが、二つの指標を受けて、市場にはやや気迷い感が見える。筆者は重要指標発表の都度、金融市場の値動きをフォローしているが、相場変動要因からの相場変動にズレを感じている。
予想に際し、インターマーケット(為替、金利、株、商品の各市場の関係性を総称した言い方)の基本的な図式を重視しており、資金の流れの観点から次の通りと考えている。米国の経済が強い・物価が高いとなれば、米金利上昇・ドル高・商品安になりやすく、逆の場合で景気後退気配・物価低下見込みとなれば、金利低下・ドル安・商品高という方向性が出やすい。株式相場については、個別企業の業績次第という個別的な動きによるが、相対的な反応は、金利高→株安、金利安→株高の傾向が出ると考える。
そこでこの1週間の動きを見ると、雇用統計では非農業部門雇用者数が微増・失業率が上昇・求人数の減少と、これまでの強い労働市場のイメージからは後退しているとの判断が出る。金利低下・ドル安・金高となった。しかし消費者物価指数では、年率は総合は低下も、コアは4%と高いまま、また前月比ではどちらも上昇(総合は前月の変わらずから、+0.1%に上昇、コアは+0.2%から+0.3%に上昇)している。インフレは収まってはいないとの見方も根強い。この判断から出てきたのが、高金利下での景気後退の可能性で、当面は両方の綱引きからドル円は140-150円での推移と考えている。
さて、そこで今後1週間の相場予想だが、ドル円はやや強めで144.50-147.50円と予想、ユーロドルはECBの利下げバイアスを先取りしてユーロは軟調に推移すると見て1.0650-1.0950、対円は157.00-160.00円と先週より大幅な円高を予想、そして英ポンドドルは1.2450-1.2750とポンドの小幅安を予想する。
(2023/12/13、 小池正一郎)