株式市場の喧騒をよそに、商品市場が大きく動いた。まず「金」が史上高値を更新(終値ベース)した。これまでの最高値は2,143.82ドル/1オンスであったが、これは取引時間中(いわゆるザラバ)であり、終値ベースでは史上初の2,100ドル超えとなった。また、原油もほぼ4カ月ぶりに80ドル(期近1カ月先物)を超えた。フーシ派による紅海での船舶攻撃などで原油供給が制限されるとの懸念から急上昇、3月1日には80.82ドル/1バーレルまで上昇した。いずれも地政学的リスクやインフレ懸念が解消されていないとの見方である。
そのような中で、ドル円は150円台で神経質な取引が続いている。これまでの展開をチャートで確かめたい。2/14に150円台に上昇した後、現在は150.20円を中心として主に149.70-150.60円のレンジで推移している、一方で、円クロスで長期の安値を更新、円独歩安の様相となった。
例えばカナダ円、111.80円(2/23)と2008/11以来16年1カ月ぶりの安値、豪ドル円は99.06円(2/23)と2014/11以来9年2カ月ぶり、英ポンド円も191.32円(2/26)と8年6カ月ぶりの安値まで円は売られた。ユーロ円も163.72円(2/26)と昨年の15年3カ月ぶりの安値164.31円にあと59銭までの円安水準となった。しかしドルインデックスは104.976(23/11/14以来の高値)を付けた後、徐々に低下を続け、現在は103.68と2月2日以来の安値圏に近付いている。いわゆる円安・ドル安が円クロスで円全面安をもたらしたと言えよう。
ところで、今日のドル円は、調整気味の米国市場を受けて下落傾向にあるが、このまま151.94円の円安値突破はないのか、あるいは今は急激に進んだドル高円安相場の調整場面なのか、考えてみた。
まず鳥の目でドル円の過去推移を見た。2022年10月に記録した32年半ぶりの円安151.94円を突破すると、次の相場は1990年6月に遡る。筆者の記録では月ベースで見た高値が155.80円だ。そこに至るまでに152円、153円などのいわゆるフィギュアなどいくつかの節目はあろうが、151.94円を超えると次の大台狙いまでは早いのでないかと言う肌感覚がある。
そこでもう一つ、株価の長期チャートとドル円チャートを比較してみた。日経平均の長期チャートでは、はっきりと34年4カ月の往って来い相場が見える。折り返し点が2008年10月の6,994.90円(ザラバベース)となる。一方でドル円は期間的にはピッタリと一致はしていないが、スタートが1990年4月の160.20円、折り返し点が2011年10月の75.57円で、現在は34年ぶりの円安圏である。大変興味深い相場の軌跡である。
さて、短期的な相場展開を左右する重要イベントが続く。毎月前半は、雇用統計と、消費者物価のダブルシグナルがあるので息を抜けないが、その前に今日は下院金融サービス委員会で、明日7日は上院銀行委員会でパウエルFRB議長の議会証言がある。これは、以前はハンフリーホーキンス法証言と言われていたが、法律で義務付けられている半期に一度の金融政策に対する議会証言である。パウエル議長の総括報告の後、同委員会の委員一人一人との質疑応答があり、これがなかなか面白い。多分「利下げは急がない」とのトーンになると予想しているが、どのような表現となるか、市場関係者は聞き耳を立て、固唾を呑んで見守るに違いない。毎年、ライブ中継(C-Span等)がある。筆者は今年も聴取する予定だ。
さて、今後1週間の相場予想だが、ドル円は148.80-151.00円と若干ドル弱含みと予想する。ユーロドルは1.0750-1.0950とユーロ強含み、対円では161.50-164.00円と先週と同じと予想。そして英ポンドドルは1.2580-1.2830とポンド高を予想する。
(2024/3/6、 小池正一郎)