ドル円が160円を超え、34に年ぶりの円安になったとき、クロス円は軒並み10年以上ぶりの円安を更新した。ユーロ円においては171.56円と、実に1992年9月以来31年7カ月ぶりの円安となったし、英ポンドでも2008年8月以来の200円超えとなった。これは筆者の出番だ、と感じた。急に質問が増えたからだ。筆者が為替に足を踏み入れて今年で52年。円安になった当時の様子について話してくれ、と言うことであった。
筆者は、円高時代を歩んできた。従ってディーラー時代から「ドル売りに強い男」と言われていた。100円を割りそうになった時、テレビのインタビューに答えて、「100円は通過点!」と答えて驚かれたことは、今でも語り草になっている。
為替の世界に足を踏み入れたのは1972年。ドル円相場は1971年12月18日スミソニアン協定で定められた1ドル=308円であった。そして翌年1973年2月から正式に変動相場相場制が始まった。そこから2011年10月に75円台の円最高値を付けるまで、ドル円は上下動を繰り返しつつも、右肩下がりのドル安相場で推移。そこで「ドルは売り」が長い間体に沁みついていた。
そして黒田バズーカやアベノミクスが始まり、今度はドル買いの時代が始まった。しかし筆者はドル売り時代が終わったとは思っていなかった。筆者の記録では125円(2015年6月)で天井を打ち、再度ドル安に戻ったときに、やはりドルは売りが機能すると書いてあった。その後100円割れ(2016年6月)と、再度の100円割れトライ失敗(2020年3月)を経て、バイデン政権が始まった2021年1月からドルが上昇し、初めてドルの本格的な上昇に意識が動いてきた。
歴史の中から、これからのドル円相場を読むとどうなるか、過去の筆者のレポートを読み直している。この52年の間、実に役に立つ言葉に埋め尽くされている。IT時代になっても、十分に参考になることがある。今後、市場状況に照らして紹介していきたい。
ところで、今日は既にほぼ1円ドルが下落した。本日のCPIでの下落を見越しての動きとみている。CPIの市場予想は、以下のとおりとなっている
前月比 前年比
予想 <前月> 予想 <前月>
総合 +0.4% <+0.4%> +3.4% <+3.5%>
コア +0.3% <+0.4%> +3.6% <+3.8%>
ここからわかることは、コアの年率の低下である。3.6%(3.7%への低下でも同様)を記録すれば、2021年4月(+3.0%)以来の低水準となる。ピークは2022年9月の+6.6%で、徐々に低下しているが、それでもFRBのターゲットの2%には程遠いので、FRBがすぐに利下げを行うことはないと推測される。しかし市場の反応は「売り」となると予想する。但し、今日の相場展開では、すでに市場に織り込まれているとも言えるので、発表の当初は乱高下するだろうが、よほどビックリするような結果にならなければ、一方向に流れが変わるとは考えていない。基調ドル高は続くだろう。
そこで、今後1週間の相場見通しであるが、米CPIは低下しても材料出尽くしと考え、ドル円は先週と同じ154.50-156.50円と予想する。ユーロドルは1.0750-1.0950、対円では166.50-169.50と先週よりユーロ強含み予想とする。そして英ポンドドルも1.2450-1.2750と先週よりポンド高と予想する。
(2024/5/15、 小池正一郎)