10月11日の「為替大観」は、筆者都合により休載いたします。次回の更新は10月18日の予定です。
昨晩11時過ぎ、「一瞬何事が起ったのか?」と、モニターのスクリーンを二度見した。150.16円から、気が付いたら149円台、あれよあれよと値が飛んでいき、5分間で147円に急落、「介入が入った!」と身構えた。しかし147.26円を底値にしてすぐに上昇に転じてその後は149円ばさみで行ったり来たり、「これは介入とは少し違う動きだ」と考え直した。公式な介入であれば、1-2円で止まることはなく、少なくとも5円程度円高に動くことになるはずと考えた。ただドル円の水準が150円から円高方向に水準訂正があったことには違いない。
では実態は何だったのか? 大口のドル売りオーダーが出たとの報道も目にした。これまで「150円超えが次の介入実施のタイミング」と市場では警戒されていたので、その市場の空気を利用した単なる仕掛けだったのかもしれない。一方で、いわゆる覆面介入(こういう言い方があるかどうかはわからないが、例えば他の中銀に少額の打診売りを依頼)の可能性も考えられる。
いずれ財務省が実績(外国為替平衡操作の実施状況)を公表するので、そこで確認できる。月次ベースで今月10月31日(火)午後7時、9/28~10/27の月間実績が明らかになり、日次ベースについては四半期ベースとなっているため12月以降となるが、まだ確定日は明らかになっていない。
ところで先週の予想相場レンジは、介入実施の予想も入れて147.00-150.20円としたが、今日までの一週間の実績は147.26-150.16円、結果的に予想通りの展開となったことに驚いている。ただ果たして介入だったのかどうかは問題でない。重要なことは、相場展開からみて、介入に対する警戒感が市場に大きな圧迫感を与えていることを改めて意識することである。
そして金融市場全体を見ると、いわゆる節目となる相場が見えてきた。ドル円では150円だが、ユーロドルは1.05ドル、少し遠いがパリティ(1ユーロ=1ドル)も視界に入る。前回のパリティは昨年2022年11月10日と記憶に新しい。現在の欧州景気情勢や政策金利上げ止め姿勢を考慮すれば、決して起こりえない相場ではないと考えている。またポンドドルで1.20ドル、ドルインデックス(DX)は110まで空白地帯が続いている。現在の107.348は既に2022年11月22日以来の高値、その後はすぐ110に届く。現在DXは週足ベースで12週連続上昇中、ドル金利が高止まりを続けていけば、ありえない相場ではない。
その米金利であるが、10年債は既に4.887%と2007年以来の高水準に到達、米国市場では5%が次の節目として浮上してきた。弱気派(価格下落派)は5.5%の金利見通しを出しているほど、インフレが収まらず、政策金利が高止まりすると予想している。節目として考えられているのが、欧州市場で独10年国債の3%、日本国債が1%となろう。独国債は今日3.02%と既に節目の3.00%を越えている。日本も今日はほぼ0.8%となっており、日銀も1%まで容認していることから早い時期に1%に達するとの見方も浮上してきた。
これらの情勢から、介入警戒がなければ150円台必至と言う環境であるが、日本政府・日銀がその旗を降ろすことは考えにくい。ドル円はもう一度150円超えをトライし、そこで本格的な介入がなければ、昨年の高値151.94円が次の節目として認識されるであろう。
ドル下落のリスクとして、米上院議長の解任可決による、政府閉鎖懸念の再燃がある。また今週末の米雇用統計も注目される。現在の市場予想は、ヘッドラインである非農業部門雇用者数が16万人(先月は18.7万人)、失業率が3.7%(先月3.8%)と減少が見込まれている。ただ昨日発表のJOLTの求人数が予想以上に増えたことで、金利上昇の引き金になったなど景気の強さを表す統計もあり、雇用環境は強弱両面の見方がある。個人的には米国経済は良好、ドル高金利高は続くことを基本にし、日本の介入動向から目を離さない姿勢である。
そこで、今後1週間の相場見通しだが、ドル円については148.00-150.50円とややドル強気で予想する。一方ユーロドルは、前週よりユーロ安の1.0350-1.0650、対円は先週と同じ156.00-159.00円と予想する。また英ポンドドルは、先週より更にポンド安の1.1950-1.2250と予想する。
(2023/10/4、 小池正一郎)